秋といえば紅葉!  期間限定で色鮮やかに染まる山のなかを歩くのは、登山の醍醐味のひとつ。貴重な紅葉シーズンを最大限に満喫するために、山登りとその麓にある渓谷を見る、または遊歩道を歩いてセットで紅葉を楽しめる欲張りプランを紹介しよう。

■安達太良山(福島県)日帰り・標高1,700m

歩行時間:3時間45分 技術:★★☆☆☆ 体力:★★☆☆☆

【ここがおすすめ】
1. 荒涼とした爆裂火口がすぐそこに見える
2. 樹林帯、森林限界、渓谷とバラエティ豊富
3. ロープウェイを使ってアクセスできる

●概要

 福島県の名山安達太良山(標高1,700m)は、日本百名山の一座。高村幸太郎が著した詩集『智恵子抄』のなかで、智恵子は「ほんとの空」は安達太良山の上に広がっている、と言っている。そんな文学の香り漂うこの山は、東北地方でも指折りの紅葉スポットだ。

 天候さえ良ければ、ロープウェイを使って山腹まで一気に上がれて、そこから歩く樹林帯や森林限界を超えたトレッキングなど、バラエティに富んだ道が続く。登山の醍醐味をギュッと凝縮したような山だ。登山道には鎖やはしごを使うような場所は無いので、初級者でも比較的安心して挑戦できる。

ロープウェイを降りたらなだらかな登山道が続く

●ルート&見どころ

 ロープウェイを使えば山麓から山頂駅(標高1,350m)がある薬師岳までの標高差約400mをわずか10分で上がってしまう。

 山頂駅から灌木の中を少し歩けば薬師岳展望台に到着する。山頂には「この上の空がほんとの空です」の石碑が立ち、多くの人が記念撮影をしている。

 ここから先、山頂までは整備された一本道の登山道なので、迷うこともない。振り返ると、麓の岳温泉や二本松市がはるか眼下に広がっている。その清々しい景色を見るだけでも登り甲斐があるはずだ。

 展望台から1時間半ほど歩くと山頂に到着する。山頂部はゴツゴツとした岩が転がり、荒涼とした景色。360度の大パノラマが広がり眺望は抜群。山頂から稜線伝いの牛の背まで遮るものが無いので、風が強くて寒くなることも。耐風性のあるジャケット、温かい飲みもの等を持っていくことをオススメする。

山頂部と稜線はごつごつとした岩が特徴。足元に気を付けながら歩こう

 鉄山までの道中は全く違った安達太良山の一面を垣間見る。すぐ脇に爆裂火口の「沼ノ平」があり、まるでSF映画のような世界が広がっているのだ。

 様々な絶景を堪能したら牛の背まで戻り、下山ルートを辿ろう。そこから1時間半ほどで奥岳登山口に戻れる。

●紅葉ガイド

 赤、黄、橙色に染まる植生豊かな森。樹林帯ではミズナラやカエデ、ブナ、ナナカマドなどが鮮やかに色付いている。なだらかな斜面一面にカラフルな木々が広がり、点在する展望地からは紅葉に彩られた秋景色が望める。

 とくにロープウェイを降りて最初に到着する薬師岳展望台から眺める紅葉が美しい。

安達太良山の下山ルートから見るくろがね小屋方面(現在は休業中)。山肌を紅葉の絨毯が覆う