山をたしなむ人なら、一度は訪れたいと願う上高地と涸沢。今回はその黄金ルートを歩いたうえで、足を延ばして日本百名山の一座でもある穂高連峰に登った。北アルプスでも随一の人気ルートたる所以に迫る。

北アルプスの黄金ルートを通って穂高連峰へ

■唯一無二の絶景 涸沢カールの紅葉

 国内の山岳シーンでとくに人気が高い北アルプス。そのなかでも秋にズバ抜けて注目されるのが涸沢だ。涸沢は穂高連峰の懐に抱かれた山岳拠点。鉄板ルートは、上高地から向かう道だが、それでもおよそ6時間はかかる。最低でも1泊2日の行程を組まなければならないという遠き道のりとなる。

 さらに上高地へ行くのも、周辺がマイカー規制されているため、シャトルバスを利用しなければ辿り着けない。

 そんな地上の僻地のような場所には秋になると人が押し寄せる。それはなぜか。涸沢カールの紅葉を見に行くためだ。穂高岳のむき出しになった岩肌に生える高山植物が色づき、美しい絨毯のように鮮やかに染まる。穂高岳の聳え立つ雄姿と相まって、その様子は唯一無二の絶景。

 今回は紅葉の最盛期前に、涸沢とその先の穂高岳に登った際のレポートをお届けしたい。この秋はぜひ、錦秋の涸沢を訪れてほしい。

【山行DATA】
歩行時間:1日目 6時間20分   2日目 5時間40分   3日目 6時間30分 
歩行距離:38.8km
標高差:1,686m

■DAY1. 【上高地~涸沢】水辺の横を悠々と歩く上高地の道

1日目は散策路を歩いて上高地から涸沢へ。エメラルドグリーンに光り輝く梓川を横目に憧れの地へ向かう。

●初日は上高地のなだらかな道を歩いて涸沢へ

 上高地は標高1,500mにある山岳景勝地だ。中部山岳国立公園の一部として、国の文化財の特別名勝と特別天然記念物に指定。美しい自然が保護されており、ハイカーのみならず、観光客も多い。周辺にはホテルや旅館が建ち並び、上高地から横尾まではなだらかな歩道も整備され、年間120万人もが訪れる山岳リゾート地だ。

上高地の梓川に架かる河童橋。橋の上には穂高岳の眺めを写真に撮る人が多くいる
小梨平は快適なキャンプ地として人気が高い

 1日目はこの平らな道を長い時間歩き続けることになる。コースタイムとしてはまず上高地バスターミナルから明神館まで1時間、明神館から徳沢まで1時間。そして徳沢から横尾まで1時間10分、歩きやすいフラットな道が続く。明神館や徳沢までは壮麗な川沿いを歩いたり、深い緑の森歩きが楽しめるのだが、徳沢を過ぎた辺りから、やや中だるみするのは否めない。早く山に登りたくなる。

穂髙神社奥宮の境内にある明神池。常に伏流水が湧き出ているため、透明度が高い

 横尾を過ぎてから本格的な登山道になり、横尾谷に聳える屏風岩の眺めや本谷橋から見える悠然とした穂高の山並みに気持ちが昂る。そこから登り続けることおよそ3時間で、念願の涸沢に到着だ。

横尾にある、横尾大橋を過ぎるといよいよ登山道が本格化する。左に見えるのは屏風の頭。
涸沢ヒュッテから見る涸沢カール内。写真の中心から左に見えるのが奥穂高岳だ
涸沢ヒュッテに着いたら名物のおでんを頬張る