■「はてな(?)」だらけの登山届

中房温泉登山口で登山届に記入する2人(撮影:兎山 花)

 登山口にて2人で協力し合って登山届を記入してもらう。名前や住所、緊急連絡先は難なく書けたようだが、持ち物をチェックするところでペンが止まる。

 「ツェルトって、なに?」「アイゼン、ビーコン?」、慣れない登山用語にとまどう2人に登山道具を説明する。「食料は何日分?」「飲料水はどれくらい?」「非常食ある?」、装備品のチェックに時間を要する。「やっと書けた!」と言い終わるやいなや裏面に気が付く2人「えー! まだあるの?」、裏面には北アルプスの主な登山ルートの地図が描かれており、その中から予定ルートをなぞらなければならない。北アルプスを知らない2人には、これもまた至難の技であった。

 後日、燕岳登山で一番難しかったことは何かとひまりにたずねると「登山届」と即答された。

■北アルプス三大急登「合戦尾根」をどう乗り切る!?

合戦尾根の岩場を登るさくら(撮影:兎山 花)

 燕岳までの合戦尾根は、整備されて登山者に人気ながら階段が多く急登が続き、烏帽子岳(えぼしだけ)のブナ立尾根、剱岳の早月尾根(はやつきおね)と並んで北アルプス三大急登の一つと言われている。そんな急登を雨予報の中、現役女子高生の2人は登り切ることができるのか。

■第一ベンチで早速スマホをチェックする女子高生

第一ベンチにて休憩時、スマホチェックに余念がない(撮影:兎山 花)

 30分以上かけて登山届を記入し、登山口でトイレをすませてようやく登山開始である。時刻は午前5時40分、曇り空だが、まだ雨は降っていない。備えとして荷物はすべて大きなビニール袋に入れて、各自ザックにパッキングしてある。合戦尾根には要所に休憩場所として、第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチ、合戦小屋が設けられている。まずは最初の休憩ポイントの第一ベンチへ向かう。

 登山口から階段の登りが続き、ひまりのテンションが上がらない。途中2人は赤い登山服を着たソロの年配女性と励まし合いながら登っていく。約50分かけて登山口から1kmの道のりにある第一ベンチへ到着する。着いた早々スマホをチェックするひまり。第一ベンチで10分ほど休憩して、重い腰を上げて第二ベンチへ向かう2人、燕山荘までまだ4.5km残っている。