七倉尾根の稜線上にたつ船窪小屋(撮影:兎山 花)

 2023年6月はじめ、北アルプスの裏銀座縦走コースのさらに奥、船窪新道と呼ばれる七倉尾根の稜線上にたたずむ青い屋根の山小屋、「船窪小屋(ふなくぼごや)」の予約が奇跡的にとれた。

 以前から一度泊まってみたいと思っていた憧れの山小屋。船窪小屋に泊まるため、6時間かけて登った急登の七倉尾根とランプの小屋と呼ばれている船窪小屋の様子をレポートする。

■七倉温泉まで予約不要の裏銀座登山バスが運行開始

大町温泉郷にある裏銀座登山バスのバス停(撮影:兎山 花)

 七倉温泉登山口は七倉ダムの北側、七倉沢の取り付きにある。昨年まで七倉ダム登山口へは車でしかアクセスできなかったが、2023年7月15日より信濃大町駅より裏銀座登山バスが運行開始となり、公共交通機関でもアクセスできるようになった。

 乗車予約は不要だが、7月15日から10月15日までの特定日のみ運行されるので、利用する場合は事前確認が必要だ。筆者は大町温泉郷に駐車し、大町温泉郷午前5時30分発のバスに乗り七倉温泉登山口まででかけた。登山口まではバスで約30分ほどの道のりである。

 バスは大町市内から大町ダムを抜け、高瀬川沿いを走る。バスが「七倉ダム下広場駐車場」バス停を通るとき、ダムを下から見上げることができる。

七倉ダム下広場より見上げた七倉ダム(撮影:兎山 花)

■鼻突八丁の急坂、七倉尾根

山の神トンネルの手前にある七倉岳、船窪小屋登山口(撮影:兎山 花)

 登山口の七倉温泉は、標高約1,060mの場所にある。登山口にはトイレがあり、日中は売店も利用できる。また、宿泊可能な七倉山荘や七倉キャンプ場も。山の神トンネル入り口の手前に七倉岳、船窪小屋登山口があり、ここから標高約2,450mの稜線に立つ船窪小屋までは急登の連続で途中の鼻突八丁(はなつきはっちょう)と呼ばれる急坂はハシゴが連続している。挑むには十分なスキルと体力、装備が必要となることを覚えておこう。七倉尾根以外にも船窪小屋へ続くルートはあるが、その他のルートは七倉尾根以上に技術と体力を要するルートになる。

 いよいよ登山開始、急坂でつづら折りの登山道を登っていく。急登だが登山道は整備され、針葉樹も手入れされているので明るく歩きやすい。七倉尾根の稜線に突き上げると、しばらく緩やかな登山道が続く。

登山道上の数字、6番から鼻突八丁がはじまる(撮影:兎山 花)

 登山口から船窪小屋まで、1から10の番号が表示されている。6番から鼻突八丁と呼ばれるハシゴの連続した急登となる。登山道上に連続した垂直のハシゴが次々と現れ、ハシゴがない場所は木の根っこを掴んで登る。

鼻突八丁のハシゴ(撮影:兎山 花)
ハシゴのない場所は、木の根っこを掴んで登る(撮影:兎山 花)

 鼻突八丁の急登が終わると、森林限界を超えた「天狗の庭」と呼ばれる展望のよい場所に出る。目の前に烏帽子岳(えぼしだけ)、不動岳、眼下に高瀬ダムが見える。ここで休憩をした後は最後の登りとなり、ハクサンシャクナゲやチングルマの花畑が次々に現れる。

 また、登山道上を散歩する5〜6羽の雛を連れた雷鳥の親子にも出会えた。登山道上に10番の標識が現れたら、船窪小屋までもうすぐそこだ。