■6時間かけたどり着いた憧れの山小屋「船窪小屋」

五色のタルチョがたなびくランプの山小屋「船窪小屋」(撮影:兎山 花)

 船窪小屋の正面にはチベットの旗タルチョが登山者の安全を願って飾られており、五色の色はそれぞれ空、雲、火、水、大地を意味している。玄関口にはコマクサの花が登山者を出迎えるように咲いていた。

船窪小屋の玄関に飾られているウェルカムプレート(撮影:兎山 花)
船窪小屋の玄関脇のコマクサ(撮影:兎山 花)

■電気、水道、冷蔵庫の代わりにあるものは

 扉を開くと、管理人の塩川さんが出迎えてくれる。玄関を入ってすぐ、火が入った囲炉裏のそばで宿泊者名簿に記入していると、温かいお茶を出してくれた。

 船窪小屋では水はとても貴重で、すべて天水で賄っている。雨樋で受けた天水をタンクに貯め、その水を煮沸して調理に利用し、登山者にも500ml(200円)で分けてくれる。

船窪小屋の裏にある天のは囲炉裏と石油ストーブ、野菜は冷蔵庫の代わりに岩室(いわむろ)に保管してある。今回案内された部屋は、玄関から一番奥の場所にある上下二段に別れた下段のスペースであった。
玄関入ってすぐの広間、昼間は休憩スペース、夜はレストランとなる(撮影:兎山 花)

 小屋内はきれいで、案内されたスペースにはふかふかのお布団が用意されていた。

廊下の奥の部屋に案内された(撮影:兎山 花)
案内された下段のスペースにはふかふかの布団が用意されていた(撮影:兎山 花)

■山菜の天ぷらにビーフシチュー、白馬の古代米、自家製漬物

 17時、待ちに待った夕食の時間。囲炉裏を囲んで机が設置されランプには火が灯り、テーブルの上には御膳とビーフシチュー、温かいお茶が用意された。

船窪小屋の囲炉裏、囲炉裏を囲んで休憩したり、食事ができる(撮影:兎山 花)

 管理人の塩川さんが御膳の内容を説明してくれる。メニューは山でとれた山菜、アザミの天ぷらに船窪小屋のお母さん(先代)が漬けてくれた自家製漬物、白馬産の古代米、ビーフシチュー、なんと古代米とビーフシチューはお代わり自由だ。

 野山でよくみかけるアザミが食べられることをはじめて知った。苦味があり、サクサクとして、添えられた抹茶塩がよく合う。山でこんな贅沢な食事ができるなんて、長かった七倉尾根を登りきったからこそ味わえる最高のご褒美だ。

船窪小屋の夕食、山菜の天ぷら、自家製お漬物、白馬の古代米、ビーフシチューなど(撮影:兎山 花)

 また、天気のよい日には御膳が外のテーブルに用意され、景色を見ながら食事を楽しめる天空のレストランとなる。船窪小屋ではビールも売られているので、絶景を眺めながらのビールと御膳の組み合わせは最高だ。

 小屋は南北に延びる七倉尾根の稜線上に建っており、日没と日の出の両方を楽しめるのもポイントだ。

天気のよい日は、このテーブルで絶景を眺めながら夕食が楽しめる(撮影:兎山 花)

■船窪小屋の設備

 小屋内ではビールやお酒、飲料、カップ麺が売られており、トイレも小屋内と外の2か所。ただし、小屋内のトイレは女性専用になっている。

船窪小屋ではビール、お酒、ジュース、Tシャツが売られている(撮影:兎山 花)

 洗面とハミガキは外に専用スペースが設けられており、水は出ないが、近くに天水を入れた昔ながらの吊り下げ式の手洗い器がある。この水は煮沸されていないので、飲用はできない。

船窪小屋の外に設けられた洗面所(撮影:兎山 花)
昭和レトロな昔懐かしい、吊り下げ式の手洗い器(撮影:兎山 花)

■一番のおすすめは、塩川さんの笑顔

 七倉尾根の登りは思った以上にきつく、鼻突八丁では登っても登っても現れる階段にうんざり。途中雨も降り、残念ながら船窪小屋からの日没とご来光は拝めなかった。

 しかし、小屋に到着したとき塩川さんが入れてくれた温かい一杯のお茶にほっこりし、ランプの下でのおいしい食事に七倉尾根の辛さも一気に吹っ飛び、何より終始温かい笑顔の塩川さんの姿に癒された。

 先代のお父さんお母さんに代わって、元々船窪小屋ファンだった塩川さんが切り盛りしている船窪小屋には、彼の山と登山者、小屋への愛情がたくさん詰まっていた。

早朝、ヘッドランプをつけて食事の準備する塩川さん(撮影:兎山 花)
船窪小屋の管理人、塩川さん(撮影:兎山 花)

●船窪小屋

・電話 080-7893-7518

・ホームページURL https://funakubogoya.net/
※営業日時はホームページよりご確認ください

※この記事の情報は2023年8月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。