どんなに整備された登山道を歩いていても、自然の中を歩く登山は常に危険と隣り合わせ。登山経験のある人なら、登山中に「危ない」と思った経験があるのではないだろうか。

 この記事では登山歴15年の筆者が、実際に登山道を歩いていてヒヤッとした3つの実体験を紹介する。ケガや遭難の可能性を最小限にするための対策も合わせて紹介するので、参考にしてほしい。 

■濡れた鎖場で足を滑らせ、岩場に腰をぶつける

難易度の高い鎖場は濡れると危険度アップ(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 都心からのアクセスがよく、多くの登山者が訪れる神奈川県の丹沢山域。筆者はその行者ヶ岳(ぎょうじゃがたけ)付近にある鎖場を降りていたときに足を滑らせてしまった。

 筆者が訪れた日は、前日に降った雨で岩や鎖が濡れていた。グローブをはめて慎重に下りていたのだが、濡れた岩で足を滑らせ、岩に腰をぶつけてしまった。グローブをしていたため手は滑らず、バックパックの腰ベルトが腰骨を守ってくれたのでケガもなく、そのあとも歩き続けることができたが「ヒヤッ」とした経験だった。

鎖場・岩場など手を使って登る場所では登山用グローブが大活躍(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 丹沢山域は初心者も多く訪れる山。そのためか、スニーカーを履き、素手で鎖場に挑む人をときどき見かける。鎖場の場所は山地図に記載されているので、登山の前に自分が歩くルートを必ず地図で確認し、鎖場や岩場がある場合は登山用グローブを持って行こう。

 また、登山靴はスニーカーよりも滑りにくいし、登山用バックパックは体に密着させられるので、足元が不安定な場所でもバランスを取りやすく、ケガの危険を減らすことができる。

 さらに岩場や鎖場、はしごなどは必ず1人ずつ登り下りし、下で待つ人は万が一登山者が落下しても巻き込まれない場所で待つのがルールだ。

■ザレ場で足を滑らせ、片足が崖へ……

赤岳の西、中岳付近のザレ場。地蔵尾根はもっと道幅が狭い(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 長野県に位置する八ヶ岳連峰の赤岳山頂付近は「ザレ場」と呼ばれる、小石や砂利を敷いたような滑りやすい登山道が多い。行者小屋から地蔵の頭に向かう地蔵尾根は、ザレ場やもろい岩場、浮石もあるうえに、道幅が狭い場所もあり危険だ。

 筆者はこの地蔵尾根を小股で慎重に歩いていたが、ほんの少し気を抜いた瞬間に足を滑らせ、崖に左足を突っ込んでしまったのだ。何事もなかったがバランスを崩していたらと思うとゾッとする出来事だった。

 ザレ場に限らず、登山道は慎重に歩いていても滑ることがある。ケガや遭難を減らすためには、登山靴のソール(靴底)がすり減っていないことを事前に確認し、滑りやすい場所では小股で、小休止を取りながら集中して歩くこと。また、鎖が設置されている場所では、鎖に頼り過ぎず、体重を預け過ぎないよう慎重に歩こう。