夏真っ盛り! 筆者の住む長野県北部でも、かつて経験したことのないほどの猛暑が続いています。涼しい沢での渓流釣りには最高なのですが、渇水状態で水温も上がってしまっています。

 皆さん、どうやって新しい釣り場を見つけていますか? 釣り仲間や釣具屋さん、ガイドブック、ネットetc. 情報源はいくつもあり、信頼度もまた然り。今回、地形図で偶然見つけ、かねてより気になっていた渓へ出かけてみました。

■地形図から膨らむ夢!

今回のルートの一部を加工したもの。出典:『国土地理院発行2.5万分1地形図』

 何度も通っている、勝手知ったる川で釣りをするのも楽しいですが、まだ竿を出したことのない、未知の渓へ出向くのも冒険心がくすぐられますね。地形図をつぶさに観察していると、とある短い沢に目が止まりました(名前はあるのですが、伏せておきます)。

 西側に連なる北アルプス前衛の峰々。その山稜から流れくる渓谷。机上でその水線を辿っていると、わずかな距離ですが支沢があるのを発見しました。いくつか枝分かれしながら水線は続き、(釣りになりそうな最奥まで)約1,500mの長さです。

 ちなみに僕は釣り場探しをするとき、『Googleマップ』で表示を“航空写真モード”に切り替えて周辺状況を確認するのですが、今回の渓は樹林と陰で黒く潰れて表現されており、判別ができない状態でした。

■地形図にない滝!

本流との出合部分。平穏そうですが、果たして先はどうなっているのでしょう

 渇水状態のおかげで、平水であれば苦戦しそうな本流の渡渉も難なく終わり、地形図通りの位置で支沢の出合(であい)へと辿り着きました。明るく爽やかな渓の入口部分です。

 さっそくロッドを振りながら遡行を開始しました。地形図からのイメージに反して、陽光がキラキラと降り注ぎ、つい油断してしまいそうです。しかし両岸は急傾斜で落石に細心の注意が必要です。

 最初の100mほどはフライには何も反応がありませんでしたが、その先でようやく小さめのイワナたちが顔を出すようになりました。さらに100mほど釣り進むと、釣れるイワナの様子が変わりました。妙に色白で体側の朱点が艶やかな魚体です。その美しさに見惚れつつ、「来てよかったな」と喜びが込み上げます。ここまで、本流との出合から水平距離にして約300mを4時間ほどかけて釣り上がってきました。

色白で美しいイワナは、幽玄な滝とどこか雰囲気が似ていました

 さて、今日一番の良型・美形イワナを手中に収め、遡行を再開しようと上流を見据えると、地形図でもチェックしていた1:1の分岐が目の前にありました。そして、右手方向から冷涼なミストが漂っているのに気づきました。

左岸側の木陰から合流している流れ。その先に滝が待ち構えていました

 それは唐突に現れました。障害物の陰で発見が遅れましたが、まさかの滝です! しかも見事な美しさを醸し出しています。明るい渓相にあって、そこだけ幽玄な雰囲気に包まれていました。

地形図に載っていない見事な滝との出会い。まさに“秘密の渓”です

 落差およそ15mの2段滝。両岸は切り立った崖が両翼を広げ岩質も脆そう。地形図ではちょうど屈曲し、等高線が狭まったノドの部分でした。沢登りを盛んにしていたときでも遡行の核心部となりそうな滝です。地形図にない滝に行く手を完全に阻まれてしまいました。しかし、予想していなかった美しい滝との出会いは嬉しいものです。