■超絶可愛いアルプス・マーモットに遭遇
標高3,969mのグリヴォーラは、尖った山頂が特徴的な山。壮観なパノラマを堪能し、岩と草原のエリアを進んで行くと、どこからか「キュッ、キュッ」という鳴き声が聞こえてきた。姿は見えないが、かなり近くにアルプス・マーモットがいるようだ。マーモットは比較的頻繁に遭遇できる野生動物だが、何しろすばしっこいので一瞬のうちに草の中に隠れてしまう。鳴き声のする辺りを注意深くじっと観察していると、しばらくして可愛いマーモットの姿が見えた。こちらに気づいたのか、じっと不動の体制で「いなかったことにして」と擬態をする様子がなんとも愛らしく、ついつい笑みがこぼれた。
森から抜け出た原っぱに、この先の湖(Lago)までの標識が出ていた。矢印に沿って足を進めると、再び登り坂になっている。足場は硬い石と踏みしめられた土でがっちり固まっているので比較的歩きやすいが、森を抜けた途端、強い日射しに晒されて汗がどっと出てきた。木陰の空気は冷んやりしていたが、夏の太陽は朝でもかなり強烈。帽子とサングラス、首を保護するスカーフが必須であることを改めて思い知る。「短いコースだから」と朝は遅めにスタートしたが、もっと早く歩き始めればよかったと少々後悔した。
最後の登り坂を越えると、丘の向こうに湖面が見えてきた。周囲をぐるりと丘に囲まれたすり鉢状の地形の真ん中に、ブルーの湖水が輝いている。パッと見ると写真で見るより小さくてちょっと拍子抜けしたのだが、トレイル・ルートから見えたのは湖の端のほんの一部に過ぎず、近くまで降りていくと青々とした澄んだ水を湛えた美しい大きな湖面が広がっていた。
ロイエ湖最大のハイライトは、なんと言っても真っ青な湖面の先に雪をいただいたモンブランの山頂が見えることだろう。ロイエ湖の情報をインターネットで検索すると、必ずこの風景の写真が出てくる。私もこの風景を楽しみにここまで登ってきたのだが、生憎雲が出てきてしまい、モンブランの山頂はチラッとしか拝むことができなかった。
やはり、まだ空気が温まっていない早朝のうちに来るべきだったと少し後悔したが、それでもこの景色は文字通り絶景。岩場の裂け目に真っ青な湖水がなだれ落ちていくかのように見え、その先の真っ青な空とモンブランの白い山頂と溶け合って、心が洗われるような清々しい気分になる。美しいパノラマを堪能しつつ、周囲の岩山に腰掛けて持参したチーズとサラミ、パンで最高のランチも楽しむことができた。