■道中携帯の電波が届かない

 転々と存在する集落以外では携帯電話の電波は基本的に圏外で、なにか調べ物をしようと思ってもできないと考えていたほうが良いだろう。ルートに関しては、道がしっかりしていて案内板もあるので、道迷いをすることは少ないだろうが、携帯が使えないとなると不安になるものなので、地図の携帯や事前のルートの把握はしっかりとしておこう。

熊野古道の道中に点在する集落ではかろうじて電波が通じる(撮影:彩)

■トイレも殆どない

 携帯の電波以上に道中なくて困るものがトイレだ。たまにあるトイレも、トイレットペーパーがないのはよくあることなので、流せるティッシュは必ず携行しておこう。携帯トイレがあるとなお安心だろう。

■山間部のため日没が早い

 熊野古道は和歌山県、三重県の山奥に存在するので、山かげに太陽が隠れてしまうのも早く、平地よりも随分と早く日没を迎えると思っていた方が良い。筆者が熊野古道を歩いたのは9月の上旬だった。事前に調べていた日没予定時刻は18時半頃だったのでその時刻まで明るいと思っていたが、17時半頃に山中は真っ暗になり、念の為持ってきていたヘッドランプに大活躍してもらうこととなった。

2日目の宿泊先であるつぼ湯で有名な湯の峰温泉へ到着した際には既に日没後だった(撮影:彩)

■宿のチェックイン時刻も早い

 更に、宿のチェックイン最終時刻も17時や18時と早いところが多く、間に合うように小走りで宿へ向かった。事前に宿へ電話をして到着予定時刻を伝えると待っていてくれたり、迎えに来てもらえるギリギリの所まで車を出してくれたりして非常に助かったが、それでもチェックインに間に合わないのではないかとヒヤヒヤしながら歩く羽目になった。

■まとめ

 予想外だったこともあったが、熊野古道自体の景色は、もちろん本当に素晴らしいもので、写真で見ていた通りの美しい古道であった。

 この中辺路は、九十九王子という参詣途上に点在する参詣者の安全を祈願するための王子(神社)が道中にある。その王子それぞれに逸話が残っていたりと、歴史を存分に感じられる山歩きだった。

中辺路には、参詣者が旅の途中で儀礼を行い、安全な参詣を祈願した「王子」という場所がある(撮影:彩)

 また、1日目に宿泊した宿ではお昼ご飯としてお弁当を持たせて頂き、ご高齢で杖をついている宿のご主人が、折り鶴を、外国人観光客も多いためであろうか「いつも渡しているんだ」と言って筆者にも渡してくれた。美しい古道と、人の温かみを感じられる山道で、とても満足した古道歩きであった。

1日目に宿泊した宿のご夫婦が持たせてくれたお弁当と折り鶴(撮影:彩)
宿にある宿泊者が自由に記帳できるノートを見ると世界中から観光客が訪れていることがわかる(撮影:彩)

 3日目は熊野本宮周辺観光を行なって山歩きの疲れを癒し帰路についた。

 熊野周辺では「葛(くず)」が有名だったり、「熊野もうで餅」という餅が有名だったりと、食べ歩きやお土産も事欠かず楽しむことができる。

熊野古道名物の熊野もうで餅(撮影:彩)

 熊野古道には、もっと歩きやすい2〜3時間の山歩きルート設定がなされている「初心者コース」や、反対にその昔修験者が修行をしたとされる「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」と呼ばれる険しい山歩きもある。

 自分の体力、日程に応じたコースを選び、古道歩きを存分に楽しんでもらいたい。