夏は登山やキャンプが本格化する季節。しかし、アウトドアは楽しい反面、多くの危険も潜んでいる。
危険と聞くと、スズメバチやヒグマなどをイメージしやすいが、見落とされがちなのがマムシだ。噛まれると強い痛みや腫れ、場合によっては死に至るケースもある。
今回はマムシの危険性、噛まれないための対策や、万が一噛まれたときの応急処置について解説しよう。
■マムシの生態と国内の咬傷事例
マムシは、沖縄県を除く日本のほぼ全域に存在する毒蛇。全長は45〜60cm、山林、水場、平地の藪などアウトドアのスポットになりやすい場所に生息している。茶褐色・暗褐色の色と柄は、森林や藪の中では天然の迷彩となり見つけづらい。
マムシが活動する時期は4月〜11月で、まさにキャンプシーズン。毒量そのものは沖縄県のハブには及ばないものの、毒性はハブより強く、咬傷を受けた部位の腫脹に加えて、全身の血小板の減少による持続性の出血や、腎機能障害、ショック状態を引き起こすケースもある。
日本におけるマムシ咬傷は、年間約2000〜3000人前後で、死亡例も10人前後存在する。
■マムシ咬傷の事例と注意点
マムシ咬傷の事例は、マムシの生息域の広さも相まって多様だ。
2022年、兵庫県神戸市では、学校の部室で遭遇し、追い払おうとした教員が咬傷を受けた事例や、動画撮影のために4歳児がマムシを手に持ったところを噛まれたケースもある。
事例からわかるのが、マムシの性格と攻撃性。性格を一言で表現すると、「臆病で攻撃的」だ。人間のほうからマムシに近づいて、捕まえようとしたり素手で追い払おうとすると、マムシは自衛のために噛みつく。
ただし、「近づかなければ安心」という考えも万全ではない。マムシは木や岩を登ることがあり、必ずしも足元にはいない。登山中の休憩のために木に寄りかかったら、枝や幹にマムシがいる可能性もある。
ヒグマやスズメバチと比較してマムシが恐ろしいのは、音や姿で危険を察知しにくい点なのだ。
■アウトドアの前にマムシの存在を認識しておく
マムシが発見しにくいとなると、対策のしようがないと感じられるかもしれない。
しかし、藪や水場、木の上にマムシが「いるかもしれない」という認識こそが最大の対策なのだ。
山菜採りやキノコ採りでよくある、不用意に藪の中に素手を入れることや、キャンプ場で見られる林の中を裸足で歩きまわる行為は、まさに危険な行為だ。
登山中に木や岩に寄り掛かるときは、その木や岩にマムシがへばりついている可能性を疑い、確認する習慣ができれば、咬傷の危険は減少する。