■与那国の祖納集落で出会った島猫たち

 与那国島の猫といえば、思い出すのは「与那国ぬ猫小(マヤーぐゎー)」という民謡だ。軽快なリズムに乗せて「与那国の猫はネズミをだます猫、青年をだますのは崎浜のお役人」と歌う、首里の役人を猫にたとえた風刺歌だが、それはつまり、琉球王国時代からこの島に猫がいたという証でもある。実際に島の中心地である祖納集落を歩いてみたら、角を曲がるごとに島猫に出会うほどの猫密度? だった。

ナンタ浜に向かう途中、一匹のミケ猫が車の前に飛び出してきた
ミケが塀に上ってミャアとひと鳴きすると、草陰からトラ猫が現れた
フクギを背に、女酋長さながらの視線を送ってきた
与那国島の中心である祖納集落は、島猫の中心でもあった

 祖納集落にある、与那国のクバで笠や柄杓を作る人気の民芸店を尋ねてみると、あいにく商品は売り切れで「良かったら猫と遊んでいってね〜」と声をかけられた。

 店先には刈り取られたばかりの艶々のクバの葉が乾燥のために広げられていて、そこで2匹の猫がかくれんぼを楽しんでいた。

 女酋長サンアイ・イソバや戦後の密貿易など、独特の歴史をもつ与那国の猫たちには、「長崎の尾曲り猫」のような特徴があるのではないか? と密かに思っていたのだが、残念ながらそうした特徴を見つけることはできなかった。

写真/仲程長治 文/シマネコキネマ