日本には様々な美しい山と、素晴らしい景観がある。その理由のひとつに、「この国が世界有数の火山国だから」というのがあるのだ……。

■世界の火山の約1割が日本列島にある現実

 世界には約1500もの活火山があるとされ、そのほとんどがアメリカ、ロシア、インドネシア、日本、チリなど、環太平洋地帯の国に分布している。そして、火山が約110もある日本は世界有数の火山国である。

 気象庁が事務局を担当し、専門家から構成される「火山噴火予知連絡会」は、全国の47火山をA、B、Cにランク付けし、常時観測対象の火山に指定している。Aランクの火山は、主に北海道、伊豆諸島、九州に分布する。

 ただし、Aランクだけが噴火の可能性がある訳ではなく、活火山は全国にあるため、日本は常に噴火の危険性に晒されていると言っても過言ではない。

【ランク分けの基準】
A 100年活動度または1万年活動度が特に高い活火山 
B 100年活動度または1万年活動度が高い活火山 
C 100年活動度および1万年活動度がともに低い活火山 

登山者に人気の高い、福島県にある安達太良山。すり鉢状の独特の景観はまさに火山の恩恵ともいえる

 国内における火山の噴火で過去50年で最大規模だったのは1990年〜1995年の雲仙普賢岳のそれである。このときは、 噴火活動が長期化し、土石流や火砕流等により周辺地域に甚大な被害をもたらした。

 近年は、Bランクに指定される富士山の噴火のリスクも囁かれている。ちなみに富士山は有史以来何度も噴火を繰り返しているが、特に平安時代に二度、江戸時代に一度の大噴火が知られている。

 一方で、富士山のあの美しい山容、見事な稜線は過去の噴火の賜物であるのも事実だ。

 他にも火山の噴火は、各地の山域を芸術的にデザインしてきた。また、火口湖やカルデラ湖は山の風景をより魅力的にする役割も果たしている。温泉の存在や、火山であること自体が観光資源となり、麓に住む人たちの生活を支えているケースも多い。

 犠牲者が出るような噴火はないに越したことはないが、日本はいわば、火山と共存共栄している国だとも言えるのだ。

「お釜」は、蔵王連峰のもっとも標高が高い位置にある火山湖。「五色沼」との呼称も。大変に人気の高いスポットである