サクラ前線も北上し、心地よい気候が続いた4月。融雪をさらに加速させるような春の大風と共に、なんとも胸が痛くなる事故が起きてしまった。神奈川県のキャンプ場で、キャンプ中の夫婦のテントに、高さ18mもの木が倒れて直撃してしまったというのだ。木が倒れた原因は根元の根腐れの可能性が高いようだが……。
筆者は“庭師”が本業だ。樹木との付き合いも長い。かつ、子どもたちを連れてのキャンプを含め、アウトドアアクティビティを楽しんでいる。庭師仕事の経験上、瞬間的な強風だと健常な樹木でも根っこと土ごと倒れることがあるので、今回の事故は不運な要因が重なってしまったように思える。
入場料を支払い、受付を済ませれば管理されたキャンプ場だ。よほどの悪天候でもなければ、そうそう事故は起こらないと思っていたのは当然だとも言える。今回の事故で、たとえ管理されたキャンプ場内であっても、自分の身は自分で守るという意識。野外活動の基本の部分を再確認しようと思った。ではどうすればいいのか考えていきたい。
■テントを張る場所を今一度検討! それぞれの場所のリスクを考える
テントを張る場所をどうやって決めているだろう。リスクを鑑みて検討しているだろうか? 川のそばは、雨天などでの川の増水。斜面の近くは、土砂崩れや地面の崩落。樹木のそばは、枯れた大枝の落下、などなど。しかし、暑いときは日差しを避けるため(フリーサイトでは)木陰が人気だ。それに、そもそもキャンプ場は、森や林の中にあるところが多い……。
今回の事故は、安全だと思っていたキャンプ場でも、こんな事故が起こるのかとショックを受けた。倒木の瞬間に居合わせるのは、非常に稀なケースだ。でも何かしら予兆や兆候があったのかもしれない。そこを考えてみよう。
■枯死(こし)や弱っている木の見分け方
木が枯れた状態が枯死である。健康で正常な木は簡単には倒れないし、途中から折れる可能性も少ない。ただし、木の種類によっては根が浅く、地面の状態によっては不安定になることもある。そこに強い風が吹けばトリガーとなりうる。
今回の事故の現場の写真の木を見たとき、神奈川県でこの時期にしては、葉っぱが少ないと感じた。元気な樹木ならもっと葉が生い茂っているはずなので、だいぶ弱っていたのかもしれない。
視覚的に、周りの木は葉っぱが多いのにその木だけ葉っぱが少ない。宿り木やノウゼンカズラやフジなどに巻きつかれている木。サルノコシカケなどのキノコが多く付いている木には特に注意が必要だ。樹皮などが剥がれてダメージを受けている木、ウロなどえぐれている空洞がある木など。風が吹くと、特定の木だけ揺れ方が不自然なこともある。聴覚的には、木から異音がするときもある。また、他の木にもたれかかった木などにも注意を払いたい。
キャンプ場の造成に伴い、傾斜地を平地にしたりすると水はけが悪くなり、バランスが崩れて木の調子が悪くなり、根腐れを加速させたりする場合もある。