■ワイン作りと日本茶作り

 お茶業界にとって新茶は一大イベント。産地では新茶フェアなどのイベントが催され、販売店では新茶のPRを打ち出す。実は、私は新茶をそこまで特別視していない。よいお茶は昨年のものでもおいしい。ただ、この時期に新茶を口にすると、季節を感じ、「今年最初のお茶」という新鮮味を感じることができる。それはワインのボジョレーヌーボーの解禁に似ているかもしれない。

 高速を降りると、西側に大きな山がそびえている。秩父と奥武蔵の山。その向こうは山梨県で、ふと、勝沼のワインを思い出した。今や世界レベルとなった勝沼ワイン。ソムリエでもある私も大好きなワインだ。

 勝沼は古くからぶどう栽培が行われていた地域で、ぶどう酒もつくられていた。ただ、それはワインとはまた別の飲み物。勝沼の若者がワインづくりを目指したとき、フランスに長期間滞在して、ワインづくりを徹底的に学んだそうだ。その知識と技術を日本に持ち帰り、勝沼の環境、ぶどうの特性を生かしたオリジナルのワインが誕生したらしい。

 では、日本茶はどうか? 各地で日本茶を盛り上げる取り組みが行われているが、どこか中途半端に感じてしまう。抹茶の製造に乗り出した地域もあったが、抹茶は緑茶とは違った製造。中国に視察に行ったという話を聞いたことがあるが、よく考えてほしい。お茶は日本の飲み物のはず。もし、他から学ぶのであれば、他業種にヒントがあるはずだ。ぜひ、勝沼のワインが生まれた経緯を知り、その開発方法を学んでほしい。

入間市にある狭山茶の畑にて。北西部は秩父の山々、その先には山梨・勝沼のぶどう産地がある

■日本三大銘茶の茶どころ

 さて、今から訪れる狭山茶はどうだろうか? 静岡茶、宇治茶と同じ日本三大銘茶とされながら、知名度はそこまで高くない。狭山茶に関わっている人が何を考えているのか、知りたかった。

 私が最初に訪れたのは、「萎凋香専門店 備前屋」。おちゃらかに置いてある「ふくみどり」の取引先だ。代表の清水さんとは電話で注文をするだけで、まだ会ったことはなかった。八十八夜(立春から数えて88日目の夜のことで、古来より農作業を始める目安とされている。2023年は5月2日に当たる)を目前にして、多忙なところの突然訪問は失礼極まりないが、備前屋の扉を開いた。

埼玉県日高市にある、「萎凋香専門店 備前屋」

「萎凋香専門店 備前屋」代表の清水さんと、茶摘み目前の茶園を訪れた