残雪が眩しい北アルプスの山々……。白銀の山にもまだ少し恋しさが残るが、麓ではニョキニョキと春の芽吹きが始まっている。

 桜の花は早足で通り過ぎてしまったが、足元に咲く花の季節はまだまだこれからだ。旬を迎えた信州の花のトレイルを紹介したい。

■源流に咲きほこるフクジュソウに癒される! 「姫川源流自然探勝園(親海湿原・姫川源流)」

一斉に咲き誇るフクジュソウ

 長野県北安曇郡白馬村にある「姫川源流自然探勝園」。糸魚川と大町、松本をつなぐ国道148号線。白馬から青木湖へ抜ける途中、木道が見えて以前から気になっていた。調べてみると、糸魚川から白馬まで148号線と58kmもの距離を平行して流れる姫川の源流域であるという。姫川はヒスイの取れる川として有名な川だが、大雨が続くと一転、険しい表情を見せる川でもある。国道沿いで見られる源流は全国でも珍しいとのことなので、花の時期を調べて行ってみた。

 駐車場は「白馬さのさかスキー場」そばの148号線沿いで、きれいなトイレもあり快適だ。国道から近くアプローチもいいうえに、トレイルもよく整備されとても歩きやすい。花の時期もよく、入口からぽつぽつと咲いていたフクジュソウは。源流近くのカラマツ林に来ると見事な大群落となっていた。福寿草の字のごとく、とてもありがたい光景に見える。姫川の源流最初の一滴は、渾渾と川床からでる伏流水のようだ。新緑の中ミズバショウが咲き、黄色い絨毯のフクジュソウの景色を見ていると、「奴奈川姫(ぬなかわひめ)」が姫川の名前の由来というのがしっくりくる。

 フクジュソウの中には真っ白いキクザキイチゲも交じっており。次はカタクリ、ニリンソウも咲くという。木道は周回できるように整備され、白馬の山里風情がとても心地いい。

 フクジュソウを堪能したら、ドウカク山のトレイルにも足をのばしたい。手入れされた針葉樹林の中をまっすぐに登る。凛とした空気が気持ちいいトレイルだ。ドウカク山から親海(およみ)湿原はすぐそこ。親海湿原は標高約750mにもかかわらず、低層・高層の湿原植物の宝庫らしいのだが、この時はまだ時期が早く枯れ草の湿原だった。それでも雪が残る山を見ながらの散策はとても気持ちよく快適だ。例年5月から7月まで、多様な湿原植物が咲くとのこと。

 駐車場から姫川源流~ドウカク山~親海湿原は1周約2時間。花の時期に合わせて何度も訪れたいトレイルだ。

■“昇り龍” 桜トレイルを駆けあがる! 「絶景の光山」

光城山の昇り龍。早足で30分で山頂へ

 長野県安曇野市にある「光城山(ひかるじょうやま)」。離れた場所からでも一際目立つ、麓から頂上まで続くピンクの直線。「あれが桜の昇り龍か!」とテンションも上がっていく。トイレと広い駐車場もあるが、桜の時期には臨時駐車場もできるほど人気の山のようだ。向いに北アルプスの山々を望む、閑静な住宅街の駐車場なので、山の準備は静かに行いたい。

 大きな案内看板の横から桜咲くトレイルが待っている。どうやら山頂までは桜がナビゲートしてくれるようだ。待ちきれずに家族は先に桜トレイルを駆け上がっていく。春のうららにいい日を当ててしまった。

 光城山は安曇野市豊科にあり、標高911.7mの里山。城山という名前の山は数多くあるが、鎌倉時代に光氏がこの山城を構えたことが名前の由来になっており。“ひかるじょうやま”となかなかイカした名前の城山となっている。山頂からは安曇野や北アルプスを見渡せるロケーションで、当時の面影を残すお城の土塁などは時代を感じさせる。

 この時期の光城山の主役は、登山道からつながる約2000本の桜だろう。桜・北アルプス・安曇野・トレイルの四重奏はまさに絶景のハーモニー!

 桜の他にも黄色のダンコウバイや新緑の瑞々しい緑など、色彩溢れる風景が始まっていた。他にもツツジなどもたくさんあり、季節ごとの風景も楽しめそうだ。隣には「長峰山」という立派な展望台を持つ山もある。2つをつないで、お気に入りのルートを作るのも楽しいはずだ。

 一つ注意したいのが赤松の倒木だ。数年前から隣の筑北村で深刻な松枯れが発生していて、ここでも多くの赤松が枯れていた。かなり伐採作業が進んでいるようだが、風の強い日など、怪しい音を立てている木には近づかないなど注意したい。

 残雪のアルプスを眺めながらのお花見トレッキングは最高の一言。桜が終わったら、次はツツジトレイルを駆けあがるのもいいのではないだろうか。