■世界遺産・笙ノ窟へ

歴史を感じさせる笙の窟。こちらも世界遺産(撮影:彩)

 この笙ノ窟(しょうのいわや)は役行者(えんのぎょうじゃ)をはじめ、多くの行者が修行を行った場として有名。

 この大普賢岳を含む大峰山脈は大峯奥駆道(おおみねおくがけみち)という修験道の場になっており、奈良県吉野から続く熊野古道のうちの一本であるが、その中でも最も険しい道である。この大峯奥駆道は世界遺産登録されている。 

急な斜面には鎖が設置されているので慎重に(撮影:彩)

 笙ノ窟を越えると一気に荒々しさが出てきて、急斜面を鎖で登ったり、梯子を登る箇所が出てくる。しかしどこも整備がよく行き届いており、気をつけて進めば危険な箇所ではない。

山頂までは登山者が多いため登山道はしっかり整備されている(撮影:彩)

 梯子や階段で一気に標高を稼ぐため、登山口から山頂までの標高差は660mほどで3時間弱ほどのコースだが、体感的にはそんなに登った気にならず、意外と山頂までが近く感じる。

■眺望の良い石の鼻へ。そこから見えた景色は予想外だった

見晴らしの良い石の鼻へ。もやがかかっていたがそれでも美しい(撮影:彩)

 展望の良い石の鼻へ到着。見晴らしが良いと、南東方面には今通ってきた日本岳や和佐又山が眼前に見えるほか、遠くは大台ケ原まで見渡すことができるが、この日は朝もやがかかっていた。たとえ晴れていたとしても、全方位が山に囲まれている。

 自然が好きだと自負する筆者でも、これだけ周りに暮らす人の気配がなく、家の明かりもない山深い所に立ち入ると、自然への畏れを感じずにはいられなかった。

神秘さをまとった大峰山脈の山々(撮影:彩)

 もやが立ち込めていたのは、石の鼻へ到着したのがまだ朝の7時半だったからだろうか。朝もやに包まれた山々は神秘さを纏い、太古の昔から変わらないその姿に時間を忘れ魅入ってしまう。

 大普賢岳の山頂を越えて周回コースへ入ると、より道が険しく足場が悪くなるため、関西では遭難者が多いことでも有名だ。筆者も過去に大普賢岳の周回コースを回った際に、遭難者の捜索を行っている場面に出くわしたことがある。

 山頂からの折り返し(ピストンコース)だけでなく、もし周回コースを行くのであれば、体力面だけでなく、もしもに備えた十分な装備品(潤沢な食料、水分、ビバーク用のツェルトなど)の準備が必要だ。