キャンプや登山で、ホッと一息つく時の相棒にコーヒーを選ぶ人は多い。しかし、ぜひ試してほしいのが「抹茶」だ。

 一見格式が高く、手を出しにくいように感じるが、そんなことはない。お花見シーズン、和菓子や一息休憩する時のお供にぜひ取り入れてほしい、抹茶の魅力と楽しみ方を紹介する。

抹茶と言えば、茶せん (撮影:坪井 千晶)

■抹茶は世界に誇る日本の文化

 手軽で身近なコーヒーは生活に馴染みがあり、レジャーシーンでも好まれる。一方、抹茶を楽しむ方はどれぐらいいるだろうか。

 お茶を飲む文化は、決して珍しくない。紅茶や中国茶、ハーブティーなど海外にもお茶を飲む文化は数多くある。

 しかし、「お茶の葉までいただく文化」は日本特有だ。残さずいただくことは、ものを大切にして、無駄にしないという島国が故に育った日本文化の特徴を表している。

縁側で行う野点(撮影:坪井 千晶)

 日本文化の美しさと精神は、海外からも称賛の声が多いが、実際に楽しむとなるとハードルの高さを感じ、点(た)てられたお茶を飲んだことがない人もまた多い。そんな難しそうに感じられている抹茶も、楽しみ方次第で身近になる。

■忙しい日常から抜け出して余白を楽しむ

 茶道と聞くと、「作法を知らない」「恥をかくんじゃないか」と不安の声を聞く。着物姿や高い茶器が扱われるお茶会は「特別な時間、空間」という印象を与え、礼儀作法を重んじる日本の国民性により、距離を置かれてしまったのかもしれない。

お茶室でのお点前(撮影:坪井 千晶)

 しかし、本来のお茶とは、そんな堅苦しいものではなく、季節の移ろいや、慌ただしい喧騒を離れゆったりとした「余白(気持ちや時間、空間のゆとり)」を楽しむもの。

 茶道をはじめて約10年、まだ弟子を取るほどではないが、上級の許状も取得し、ものを大切にする精神や「余白」を感じる心にますます魅力を感じるのだ。

ゆったりとした時間を楽しむのは、お茶もキャンプも同じ(撮影:坪井 千晶)

 この「余白」を楽しむ感覚は、休日にキャンプや登山を楽しむ人にも共通。自然の中で感じる非日常的な開放感の中に、慌ただしさや圧迫感はない。

フランス、オベルラグルの開放的な風景(撮影:坪井 千晶)

 通常、屋内で行われるお茶会を屋外で行うことを野点という。野点は、アウトドアの「開放感」と茶道の「余白」が融合した、ぜいたくな自然の楽しみ方と言える。