●概要

 深田久弥と百名山の言葉を知っていても甲武信ヶ岳は知らないという人は多い。奥秩父の山中にあり、山頂には祠や三角点もない。しかし、山梨、埼玉、長野の三県にまたがり、麓からは千曲川(信濃川)、荒川、笛吹川の源流が湧き出ており、他の山にはない魅力を秘めている。ここから太平洋に流れ出る水の滴があれば、遠く日本海まで流れ出るものもある。関東上信越に豊かさをもたらす水は甲武信ヶ岳から生まれている。

千曲川・信濃川水源の水飲み場

●周遊ルート

 源流沿いを往復するルートのほかに、三宝山を通るルートもある。三宝山のほうが8m標高が高い。山容も堂々としており、登りがいのある山だ。こちらのほうが1km程歩く距離が長く、クサリ場もあるため、中級向けといえる。時間と体力に余裕があれば、こちらのルートを選んでもいい。

山頂から北西の方角。この時は雲に隠れていたがここからアルプスの主脈まで見通せる

●甲武信小屋の利用

甲武信ヶ岳へ行ったら絶対訪れたい「甲武信小屋」

 今回の山行ではテント泊を行ったが、装備の有無や荷物が重くなることで不安を抱える人は小屋泊を勧めたい。1泊2食付きで8500円、素泊まりで5500円(※土日や連休はプラス1000円)だ。この小屋の主人は勤続約40年を迎える、通称『徳さん』だ。山梨側からのルート、「徳ちゃん新道」は何を隠そう、この主人の名前から由来する。小屋前にはウッドデッキがあり、多くの人が行き交い、談話を楽しんでいる。朝には目の前から太陽が昇り、御来光を拝むことができる。

陽が昇ると空が茜色と藍色の2色に分かれる