■恋のバトルは熾烈な争い

 冬眠から覚めたばかりの頃は夜だけの宴だが、数日経つと、昼間でも池の中での大バトルを見ることができるようになる。いわゆる「ガマ合戦」と言われるものだ。オス同士のバトル勃発!  押すわ蹴るわの大騒ぎとなる。「新技〇〇ジェット! 」などと言いながら大技をかけている輩もいるかもしれない。

この写真の中だけで42匹のヒキガエルがいる!

 そんな激しい争奪戦を勝ち抜いてお気に入りの相手とペアになると、次々に産卵を始める。今度は「卵祭り」の開催だ。ヒキガエルの卵は、ゼリー質の物質に包まれ、ひも状になっている。たくさんの卵で小さな池の中は埋め尽くされてしまう。

長いひも状の卵が池の中を縦横無尽に張り巡らされる

 しかし、そのヒキガエルの大騒動も、一週間から十日で終了する。その後、ヒキガエルは、ガマ合戦の疲れを癒すかのように再び土の中で眠りにつき、本格的な春の到来を待つ。池は、大騒動がなかったかのように静まり返る。しかし、産卵から約一週間後、今度は「オタマ祭り」が始まる。小さな真っ黒いオタマジャクシがゼリー状の卵塊から出てくるのを見るのもうれしいものだ。

 地域によって産卵時期は多少異なるが、早春のわずかな期間にしか見られないヒキガエルのダイナミックな生態。近くの公園や池で眺めながら、自分の若かりし頃の恋物語と重ね合わせるのも悪くない。応援したくなるカエルを見つけると、個人的な感情を注入しすぎて疲れてしまうので要注意。ヒキガエルにまつわるこんな話を聞けば、宝くじ売り場の某女優さんも「カエルスペシャル気になるぅ! 」と言ってくれるに違いない。