■3年ぶりの旅立ちはワクチン接種証明から

 まず必要なのはワクチンの接種証明だ。これは住んでいる自治体で取得するのだが、我が新宿区はコンビニで手続きできるのである。さっそく……と思って調べると、マイナンバーカードが必要だということがわかった。そんなもん持ってはいない。作れ作れとことあるごとに通知が来るが、面倒だから放置している。

 それならオンラインで申請をしようと思ったら、これまたマイナンバー所持者限定ときた。では持っていない人間はどうすればいいのかと新宿区のホームページを見ると、コレがなんと「郵送での手続き」なのであった……。いやがらせのようなアナログさだが、仕方なくホームページから申請書をダウンロードしてプリントアウトして記入し、必要書類をまとめて、さらに切手を貼った返送用封筒を同封して送付する。待つこと1週間で、やっと「海外用ワクチン接種(3回)証明書」が届いた。

 続いてネパールビザの手続きだ。これは現地空港到着時でも大丈夫なのだが、久しぶりの海外なのだ。気持ちを高めたい。なので目黒に赴き、駅のそばにあるネパール料理店「バルピパル・キッチン」で絶品の水牛ダルバートをいただき、そこから目黒通りをのんびり歩いてネパール大使館に行ってみた。

 申請にはあらかじめオンラインでの申請が必要なのだが、これはクリアしている。申請時に送られてきたビザ・アプリケーション・フォームと料金4000円(15日ビザ)を持って窓口に向かうと…… 机に貼られていた「必要申請書類」の一覧を見て僕は絶句した。大使館ホームページのどこにも表記されていなかったワクチン接種証明と、それにネパールでの10日分のホテル予約表を出せと、こう書いてあるのだ。

 ワクチンのほうはいい。区役所から送られてきたばかりのものがある。しかしホテルなんて聞いてないよ。いったいどうしよう…… と思ったのだが、開き直ることにした。公式サイトにも記載がないんだから、そんなもん知らんわ。そ知らぬ顔でフォームと料金だけを提出してみたのだが、案の定というかなんというか、何も言われないのであった。

 しかもビザのシールが貼られたパスポートが返ってくるのは「3営業日以降」というはずが、このときはどういうわけだか金曜申請の翌週月曜日受領。「0営業日」でビザをゲットできてしまった。なにもかもイイカゲンなのだが、いきなりアジアの適当さにぶつかり、旅に出るのだという実感もまた湧いてくる。

 そして飛行機やホテルも予約してみたのだが、あまりに久しぶりすぎて実感がわかない。ネット上のこんな手続きだけで本当に航空券が取れたのだろうか…… なんて訝しんでしまう。そもそもパスポート番号や失効日など、旅人ならば暗記しておくべき必須事項をすっかり忘れていて、もうカタギと変わらない。そんな手探り感もまた楽しみつつ、僕は出発の日を迎えた。

目黒にあるネパール大使館は一般の住宅と変わらないたたずまい
大使館の窓口には公式サイトにはない申請書類が書かれていてびっくり