■揺れや安心感も心地よさの理由

適度な揺れも心地よさのポイント

 心地よい「揺れ」もハンモックの特徴のひとつです。この揺れは、例えるなら「ゆりかご」のようなもの。電車やバスに乗るとついつい居眠りしてしまったり、心地よい揺れが眠気を呼ぶことは、多くの方がご存じなのではないでしょうか。

 揺れが入眠の手助けになる可能性については、脳科学の分野でさまざまな検証が行なわれていますが、まだはっきりとしたことはわかっていないそうです。しかし、赤ん坊がゆりかごだとぐっすり眠るのは、なんらかの形で揺れが安眠に作用している可能性を示しています。

体がすっぽり包まれている構造が安心感を生む

 実際に、「いままでテントでは熟睡できたことなんてなかったのに、ハンモックに代えたら、アウトドアでも熟睡できて驚いた」といった話を聞く機会は少なくありません。揺れによって、眠りの質が向上する可能性は高いといえるでしょう。

 また、ハンモックを心地よいと感じるのは、体圧分散やゆりかご効果だけでなく、「安心感」も影響しているように感じます。ハンモックの支点には樹木を使うのが一般的ですが、樹木の多い場所=樹林帯は雨風を樹木がある程度遮ってくれる場所です。樹林帯は森林限界を超えた高所や海沿いの開けた場所のように雨風に直接晒されることの少ない、自然界においては安心して過ごせる場所とも言えます。ハンモックが樹木へ依存しがちなことは、結果として危険を回避するのにつながっています。

 森の中でハンモックの揺れに身をまかせていると、徐々に緊張感が解けていくのがよくわかります。テントの中のように、外界と隔てた空間にいて感じる「防御された安心感」とは違い、何にも守られていないのに緊張していない状態、まるでその「環境に溶け込んでいるような安心感」がハンモックにはあるのです。

 ハンモックには、自然と調和して過ごすヒントがあるような気がしてなりません。

<※本記事は『ハンモックハイキング』(山と溪谷社)を一部抜粋、加筆、再編集したものです>