登山のオータムシーズンもそろそろ終わり、これからウィンターシーズンに突入していく。このタイミングで装備の点検をする人も多いだろう。今回は、メンテナンスという観点ではあまり着目されない緊急時用装備「エマージェンシーシート」を取り上げたい。

 エマージェンシーシートとは、とても軽量でコンパクトな防寒用極薄シートで、サバイバルシートやレスキューシート、エマージェンシーブランケットなどとも呼ばれる。ポリエステルやポリエチレンなどのシートにアルミを貼り付けた製品が多い。

 アルミは人間が放出する赤外線(電磁波)を反射する能力が高く、ポリエステルやポリエチレンはビニール袋をイメージする通り密閉力が高い。エマージェンシーシートは、アルミによる赤外線反射力とポリエステルなどの密閉力を活かして、シートに包まれた人体の熱やエネルギーを逃さない製品だ。

左が劣化したエマージェンシーシートで、透明になった部分から床が見えている。右は最近購入した未使用品

 エマージェンシーシートは、登山の緊急時や災害時の使用が前提の装備なので、そもそも手に入れてから一度も広げたことがないという人もいるかもしれない。かくいう筆者は、5年前に一度、ビバーク時に使用したのを最後に、密閉袋にしまったままにしていた。

 このシートを先日ひさびさに広げたところ、なんと「スケスケ」状態になっていた。一部分のアルミが剥がれ、透明のポリエステルシートが現れていたのだ。補足しておくと、新品でも光を透かすとうっすら向こうが見えるが、アルミが剥げた部分はガラスのようで透過率100%に近い。どちらかというと「丸見え」だ。

 そんな丸見えスケスケシートの保温力が低減しているのは間違いないだろうが、一体どの程度だろうか。筆者のようにエマージェンシーシートを繰り返し使用する登山者も少なからずいるだろうから、もしほとんど保温できない状態だとしたら注意喚起しなければならない。妙な使命感が湧いてきたので、アルミが剥がれたシートの保温力を確かめ、剥離の原因と対策を考えてみることにした。