■「大江山」で鬼伝説を学ぶ

巨大な鬼瓦が出迎えてくれる「日本の鬼の交流博物館」(写真提供:福知山市教育委員会)

 福知山駅から北へ車で約30分の所にある福知山市大江町の「大江山」は「鬼伝説」が伝わる山あいの町で、雲海の名所としても知られる。

 この地には3つの鬼伝説が伝わる。その一つ「酒呑童子」は、全国各地に残る鬼伝説の中でも、古くから伝えられおり、江戸時代に歌舞伎の題材として扱われるなど有名で、現代では国語の教科書に掲載されたこともあるという。

 地域にある「日本の鬼の交流博物館」は大江山の鬼伝説をはじめ、国内外の鬼にまつわる展示物が豊富で、人間と鬼とのかかわりについて、あらゆる角度からの情報を発信している。

鬼にまつわる世界各地の貴重品を展示する「日本の鬼の交流博物館」(写真提供:福知山市教育委員会)

 博物館に行くまでの道中の「二瀬川(ふたせがわ)渓谷」は吊り橋が架かり、本物の鬼が出て来そうな様相も漂う。そんな不安感を取り除いてくれるのが、かわいい表情で出迎えてくれる鬼のモニュメント。道中にいくつも展示され、楽しい観光地の雰囲気を醸し出している。

笑顔でポーズを取る鬼のモニュメントが道路沿いの各所に飾られている(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 博物館に着くと、出迎えてくれるのは高さ5mの日本一巨大な鬼瓦。怒りに満ちた迫力の表情は存在感たっぷり。

 館内は「鬼とは何か」という核心に迫ったものから「暮らしの中の鬼」「民俗芸能の中の鬼」「演じられる鬼」「能・狂言の鬼」「鬼女・般若」「世界の鬼」「鬼瓦」など、さまざまなテーマで鬼について学べる。まさに「鬼の素顔」に迫った展示物がずらりと飾られる珍しい博物館だ。

各地の鬼面が並ぶ「日本の鬼の交流博物館」。恐ろしい表情も地域によってさまざまだ(写真提供:福知山市教育委員会)

 中でも「演じられる鬼」のコーナーでは、小さい子どもだと泣き出してしまいそうな迫力の表情の鬼面を展示。現在も残るナマハゲ文化など、鬼の芸能の意味や特徴について解説している。

●日本の鬼の交流博物館

住所:〒620-0321京都府福知山市大江町仏性寺909
電話:0773-56-1996

URL:https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/onihaku/

 戦国屈指の智将と言われた明智光秀は、日本史上最大のクーデター「本能寺の変」を首謀し、悪役のイメージが強い。しかし、福知山では光秀にまつわる大祭が毎年開催されるなど、地域の英雄として今も市民に愛されている。プロジェクションマッピングの演出も光秀を慕う気持ちの表れなのだろう。

 三段池公園ではあらゆる場所で癒しを堪能し、さらに大江山では鬼伝説にふれ、あらためて社会における鬼の存在の大きさを感じた。

 福知山の歴史をたどり、自然や文化にふれた今回の旅。日常とは違った開放感も手伝って、妻との会話や散策が楽しめ、とても新鮮だった。