■目を見張るほどの美しい清流へ

 今回ご紹介するのは、漁業監視員詰所前川原から川湯温泉までの約9kmの区間だ。

 スタート直後には、早速水流が集まって階段状に落ち込んで行く瀬が登場する。瀬の最後には厄介な岩と、時期によっては倒木があるため、事前に上陸してスカウティングしてからトライしよう。ちなみに僕は最後岩に引っかかって豪快に転覆した。でも川が綺麗なので全く気にならない。むしろ、ここで一発川に入っておいたほうが、大塔川をダイレクトで感じられて絶対にいいのである(強がり)。

最初の段々の瀬。流れの最後に倒木があるので慎重に

 その瀬を越えていくと、魅惑の清流区間が始まる。あまりにも綺麗なので、何度も上陸しては岩から飛び込んだり潜って遊んだりしてしまう。こんな良い川、急いだってしょうがない。この川は道路と並行しているので、時間切れになったらそこで上陸して終わってしまえばいいだけのこと。じっくりとその清流具合を楽しむといいだろう。

もう漕いでいる場合じゃない!  目一杯清流と戯れる

■のんびり区間とアート区間が心を癒す

 渓谷区間を抜けると、集落沿いを流れる穏やかな渓相となる。船の上で横になり、頭上の青空と揺れる木々、そしてトンビの周回を眺めながら流れて、深い癒しの時間を堪能する。川沿いに建つ家の窓からおばあちゃんが顔を出し、「気持ちよさそうだね〜」なんて話しかけてきたりして旅情を感じる。腹が減ったら適当な川原に上陸して昼飯を食らい、川原で昼寝をし、ただただのんびりする。ある意味、これがこの川の正しい過ごし方だ。

頭上にトンビ。流れに任せてどんぶらこ

 その後もゆらゆら流れていくと、不思議な地層が乱立する絶景区間に到達する。どうやったらこんな形状になるのかわからないが、なんともいえないほどにフォトジェニックな光景だ。川下りしてこないとなかなか見られないこのような風景に出会うと、非常にテンションが上がるものだ。

これぞ自然が作り上げるアート作品

 その後は、ぽっかり空いた空間に流れ落ちる一筋の美しき滝が現れる。こちらも絵に描いたような光景だ。滝行をするにももってこいなので、せっかくだから、ここで日頃の心身の汚れを落として身を清めてしまおう。

こんなところに来られるのも川下りの醍醐味だ

 この滝を越えていくと、程なくして温泉街が見えてくる。最後に待ち受けるご褒美は、川湯温泉脇の川原で入るオリジナルの露天風呂だ。なんとここの川を掘ると、およそ70℃のほどの源泉が湧き出てくる。ここで自分好みの湯船を作り、川の水を引き入れて温度調節して入るのだ。こんな夢のようなゴール体験ができてしまうのが、大塔川の大きな魅力の一つなのである。

 川下りが終わっても、この流域の旅は終わらない。大塔川周辺には、観光、グルメ、温泉と、魅力的な場所が多く点在している。川を下って終わりではもったいない。

 次回の後編では、その辺りの情報もお伝えしていこうと思う。

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