日本有数のスキーリゾートとして有名な長野県北部の“HAKUBAVALLEY”。北アルプス北部、その東麓は姫川水系の本・支流がよりどりみどり! 渓流釣りを思いっきり楽しめるエリアでもある。

 3,000m級の山々から滔滔と流れくる水は真夏でも冷たく、渓流魚たちの生息環境としても恵まれている。透明度の高い姫川本流、平川や松川に代表される大きな支流群と、さらにその枝沢。本流を挟んで東山方面からの渓流も数多く、充実したフィールドだ。

 開けた河川でダイナミックな景色を楽しみながらのびのびと。はたまたひっそりとした小渓流で小気味よく。コンディションに合わせての川選びも醍醐味の一つだ。

■夏真っ盛り! ウェットウェーディングで清冽な水を感じる釣り

白馬村。松川「南股入」を二股より眺める。上流は雪渓が残る唐松沢だ

 渓流魚・トラウトたちは活動できる温度域が意外と狭い。冷水性の魚のため、水温が上がりすぎると活性が悪くなる。夏でも源頭に雪渓が残るような山岳渓流なら、晴天が続いても水量が豊富で清冽な流れに恵まれている。白馬エリアは夏の渓流釣りにもってこいだ。

 本流と違い、高低差の大きい山岳渓流に入る場合、動きやすさと安全面から沢登りのような支度で釣り上がる、ウェットウェーディングが一般的だ。釣り始めるポイントまでの距離にもよるが、アプローチが長くなる時もある。この時期は暑さもかなり堪えるので、早く水に入りたくてウズウズしてしまう。

日中でもこの水温。トラウトたちには適温のはず……

 この日、最初のポイントまで辿り着くのに徒歩で1時間半ほどかかっていた。頑張って歩いた分、暑さですっかりバテ気味になっていたので、冷えた水が恋しい。普段なら水温10℃を上回ることはあまりないが、さすがにこのところの高温続き、この日は10.3℃だった。

 あまりの気持ちの良さにじっくり水に浸かっていたら、じんじんと痺れてきた。

■澄んだ流れ! 白く輝くイワナ

 開けた谷間は澄んだ水が豊富に流れ、山肌の緑は濃い。上部の谷間には雪渓が見え隠れしている。白い入道雲と青い空のコントラストが見事だ。トンボが飛び交い、足元にはイナゴたちが休んでいる。まさに季節は夏! 釣りの支度をしていると、暑さに強いアブたちが盛んに群がってきて邪魔をする。

 陸生昆虫を模した、やや大きめのドライフライを岸際の木陰に流してみた。水面を勢いよく割って飛び出す良型イワナたち! と、期待に胸をワクワクさせていたが……。

 だが実際はそれほど上手くいかなかった。流れの中で動く魚影はあるけれど、浮上してきてはまるで匂いを嗅ぐようにフライに近づき、がっかりしたように沈んでいく。警戒心が強めの様子……。

巻き返しから出てくれた色白のイワナ。川の色によく馴染んでいた

 ドライフライを諦め、ウェットフライを“落ち込み”の脇の“巻き返し”に流し込む。絶対に出るはずだと信じて深さやスピードを変えて4投目! 流れの奥から出てきたイワナがフライを咥えて反転した。川の色をそのまま写し込んだような白く輝く魚体に惚れ惚れする。サイズこそ尺に届かなかったが、ひとまずの良型に気持ちも和んだ。