梅雨も明け、本格的なアウトドアシーズンの到来だ。今回はロッククライミングの経験がなくても楽しめる、兵庫県南東部・六甲山の裏側にある百丈岩(ひゃくじょういわ)と呼ばれるスポットを訪ねてみた。
■標高292mの巨岩「百丈岩」
裏六甲の有馬温泉からほど近い鎌倉峡は、室町時代には有馬温泉の湯治客が訪れる風光明媚な観光地であった。鎌倉峡の名前の由来は、鎌倉からやってきた最明寺入道(さいみょうじにゅうどう)。最明寺入道とは鎌倉幕府の執権北条時頼のことで、出家した後はこの辺りに庵を結んでいたらしい。そして、この鎌倉峡を代表する景色が標高292mの巨岩「百丈岩」。歴史ある観光地で、今もなお自然豊かな美しい景色が大切に守られている。
■百丈岩を間近に眺められるおすすめ登山道
鎌倉峡に到着すると、否が応でも目に入る「百丈岩」。その容貌は、中国「袁家界(ユエンジャージエ)」の石林の一つを持ってきたかのような巨大な石柱だ。まるで海外のような異国感が漂う。
百丈岩頂上では、まるで宙に浮いているかのような感覚になるが、これは現地を訪れた人にしかわからないので、ぜひ一度チャレンジしてほしい。
しかし、立っていられるスペースが少なく、三方は急峻な崖。足場も悪く、転べば転落し命を落とす危険性もあるため、くれぐれも事故のないよう注意したい。
この百丈岩への登山道はいくつかあるが、一般的なのは「ハイカーのオアシス 鎌倉峡売店 やまびこ」登山口から入る「鎖場のある一般コース」。登山口を同じくする「上級コース」は、ロッククライミングのコースなので、一般向けではない。
筆者の感覚なのだが、鎖場のある一般コースは鎖場が工程の半分以上あり、ヘルメットの着用など注意が必要だ。
もう一つのルートは「百丈岩北尾根ゆるやかコース」。登山口はやまびこ茶屋登山口から170m離れた場所にあるが、途中で鎖場のある一般コースと合流する。このコースを選んでも、鎖場が少ないというだけで、完全には鎖場は避けられない。
鎖場のある一般コースを通り下山する場合、鎖場コースの崖が急すぎるため、視界に入らず、北尾根ゆるやかコースとの分岐に気付かず、そのまま北尾根ゆるやかコースに入ってしまいがちだ。ただし、分岐を間違えても歩く距離が延びるだけで、下山できないわけではない。
筆者のおすすめは鎖場の一般コース。登山口から頂上までは350mで、20~30分で登ることができる。登山道は崖の連続だが、景色はよく、途中で百丈岩を間近で見られるスポットもあり、頂上に至るまでワクワクが続く。
崖の鎖場には、鎖に加えてザイルもあるが、上り下り共に鎖やザイルに頼りすぎないことが、安全に通行するポイント。鎖やザイルに完全に体重を預けると、バランスを崩しやすくなり、転倒、さらには転落の原因にもなりかねない。足場を確保しながら進むことが大切だ。
岩場が多く、直射日光に照らされ続けるため、短い行程ではあるがこまめに休憩を取り、水分補給をしながら進みたい。