日本アルプスの北部に位置する飛騨山脈は標高3,000m級の日本を代表する山々が連なる。一般的には「北アルプス」という呼び名で親しまれ、世の登山者憧れの山脈だ。ここには日本の標高第三位の奥穂高岳(標高3,190m)や槍のように尖ったピークが象徴的な槍ヶ岳(標高3,180m)をはじめとした、日本屈指の高山が多い。それぞれのピーク同士は繋がっていて、どこまでも続く荒涼とした稜線はハイカーの心くすぐる光景だ。

 主だった山の頂上は森林限界を超えているので山上からは大パノラマが望め、これぞトレッキングという眺望。景色だけでなく、色とりどりの高山植物が咲き誇るお花畑や夏でも溶けない雪渓など北アルプス特有の山歩きも出来る。そんな魅力溢れるエリアにおいて、今こそ登りたい!と熱く推薦する山を編集部が厳選して6座をピックアップ。1座ずつ全6回の連載としてお届けする。第3回目は、イルカや眼鏡などの形をした奇岩が点在し、「北アルプスの女王」という異名を持ち絶大な人気がある「燕岳」。自分のレベルに合わせてこの夏、チャレンジしてほしい。

■[長野県]燕岳(つばくろだけ) 標高:2,763m  行程:1泊2日

歩行時間:8時間
技術レベル:★☆☆☆☆
体力レベル:★★★☆☆
【オススメポイント】
1. 白い花崗岩で覆われた山頂
2. 槍ヶ岳や裏銀座の稜線の眺め
3. 合戦小屋のスイカ

合戦尾根を登っている途中に木々の間から見える槍ヶ岳

●北アルプスの女王

 山頂を白い花崗岩で覆われ、イルカや眼鏡などの形をした奇岩が点在する燕岳。その美しさとユニークな山容から「北アルプスの女王」という異名を持ってハイカーから絶大な人気を集めている。

 山頂の手前には燕岳や表銀座縦走路の拠点ともなる燕山荘がある。この場所から見るテント場と燕岳の組み合わせは絶景写真ポイントとして定評があり、訪れた際は誰もがシャッターを押す、不動の人気スポットだ。

燕岳山頂直下。ビーチのような白い岩で覆われている

●宿泊すれば朝の絶景も

 燕岳は健脚であれば日帰り登山も可能だが、体力に自信が無い場合は燕山荘かテント場に1泊してゆっくり山行を楽しむのがオススメ。

●ルートガイド

 燕岳へのベースは中房温泉だが、ルートは二つある。東沢乗越を経由して北燕岳を経て燕岳を通る迂回ルートと、急な尾根を昇りつめて直接燕岳へアクセスする合戦尾根ルートだ。合戦尾根を経て燕岳に向かう道が一般的で、多くの人はそちらの道を選ぶ。

 登山道は整備されており歩きやすいのだが、北アルプスの三大急登と呼ばれる合戦尾根は、頂上まで標高約1,000m、距離10kmと楽な道のりではない。おかげで途中に設置されているベンチも比較的多い。

前半の急登を登り終えると現れる合戦小屋。ベンチが豊富なので休憩に最適

 およそ3時間の上りを踏ん張れば、合戦小屋が現れる。ここでは夏季名物の冷たいスイカが食べられる。

 合戦小屋からはまた尾根を登りつめる。坂も緩やかになり、木々が低くなって視界が開ける。振り返れば八ヶ岳や美ヶ原まで見渡せ、西には槍ヶ岳の穂先が見える。

 合戦尾根ルートは前半の上りさえ乗り越えれば、後半は気持ちのいい尾根歩きが楽しめるのだ。

 小屋から約1時間半で燕山荘の稜線に出る。そこでは一気に視界が開け、北には頂上に雪を被ったような白い花崗岩で覆われた燕岳があり、目の前には鷲羽岳や双六岳からなる裏銀座が聳え立ち、槍ヶ岳がはっきりと見える。南の遠方には富士山が薄っすらと見えて、東には安曇野の街が眼下に広がる絶景だ。

 景色を堪能したら燕岳へとさらに歩みを延ばす。燕山荘から往復約1時間の軽快な稜線歩き。燕岳頂上付近は「イルカ岩」や「メガネ岩」など名前が付いた岩が多数あり、探すのも面白い。