北海道、大雪山系の東側にそびえるニペソツ山(2,013m)。「日本百名山」にこそ入っていないが、北海道の岳人にもっとも人気のある山と言っても良いほど親しまれている秀峰だ。

 行程の長さから健脚者向けの山だが、稜線上にあるテン場は眺望も素晴らしい場所。今回は山中1泊でニペソツ山に登ってきた。

■日本百名山に選定されなかったニペソツ山

 言わずと知れた深田久弥の日本百名山。北海道には9座の山々が選定されているが、その中にニペソツ山は入っていない。百名山には入らなかったものの、次点として選考から漏れた秀峰はいくつもある。

 ニペソツ山もそんな“101番目”と呼ばれる山のひとつだが、他の山とは少々異なる、選考されなかった理由がある。それは、深田久弥が何度かニペソツ山登山を計画したものの、毎回天候に恵まれず山に入れなかったのだ。

 もし、深田久弥がニペソツ山に登っていたら、他の北海道の百名山をひとつ削ってでも百名山に入れていただろう。それだけ圧倒的な山容を誇る秀峰なのだ。

■復活! 人気の登山ルート「幌加コース」 

幌加コースの登山口。まずは2kmの林道歩き

 「百名山かどうか」は山自体には何の関係もない。しかし、山を巡る周囲の環境は大きく変わる。百名山であることで多くの人が訪れ、登山道も整備されていく。ニペソツ山が良い山とはいっても、全国的にはマイナーな山。登山道は長く、登りも厳しい。そのため、お世辞にも整備が行き届いている登山道とは言いがたかった。

 転機となったのは2016年の台風被害。以前の登山ルートであった「十六ノ沢コース」のアプローチである林道が崩壊し、通行不能となったこと。復旧の見通しが立たなかったため、廃道状態であった「幌加コース」が再整備され、2018年より再びニペソツ山へ登れるようになった。

 歩行距離は以前の十六ノ沢ルートよりも長くなったが、非常に良く整備されたため、むしろ歩きやすくなったくらいだ。そのせいもあってか近年は登山者も増えており、人気の山となっている。

■登りはキツいが稜線上には展望抜群のテン場!

天狗平のテン場は見晴らしのいい稜線上にあり、日の出も日没も眺めることができる好立地だ

 東大雪の山は、表大雪の山と異なり急峻な山肌が多い。それ故に登りもキツイ。所々にロープも設置されているが、楽な登山道ではない。山頂までの全長は12km、総標高差は1,600mほど。

 健脚者であれば日帰りも可能だが、稜線上の「天狗のコル」と呼ばれる場所がテン場となっており、携帯トイレブースも設置されている。水場がないため、下部から担ぎ上げる必要があるが、展望抜群の山の上の贅沢なテン場。山でのひとときを大切にするなら、こんなに良い場所はない。

※「天狗のコルでのテント泊について」
「十六ノ沢コース」が通れなくなり、その代替コースとして「幌加コース」を復活させた際に、(急な変化に対し)大雪山国立公園協議会が対応しきれていない現状です。現コースで小天狗の指定地を利用することには無理があり、「天狗のコル」でテント泊(野営)することは各省庁含め、地元の上士幌町や関係団体で合意は取れており、この場所での野営が推奨されています。

詳細は、環境省大雪山国立公園上士幌管理事務所(TEL:01564-2-3337)まで。