■寝袋は2種類! さらに仲間たちの温もり

上部テントのスペースは限られる。コンロなども宙吊りにする。これはまだ床が平らなので余裕がある

 寝袋は基本的に、BC用と高所用を2種類持っていく。テントが広く快適に過ごせるBC用は、若干大きめの−18℃対応目安。それに対して高所用は小さめの−9℃対応が目安だ。

 本来なら、より気温が低く環境が厳しい高所ほど暖かくして寝たい。だが、テントが小さく荷上げが大変なので、寝袋を小さくして、ダウンジャケットやテントシューズを併用して寝ることが多い。

 ただ1人1テントのBCに対し、狭いテントでギュウギュウになって寝る高所では、それで何とかなっている。ありがたい仲間たちの温もりだ……。

■色んな意味で際どいテン場

パキスタンで登山中の上部キャンプ。眼下は切れ落ちている(撮影:平出和也)

 ポーターレッジ(※)などで壁にぶら下がって寝たことはないのだが、岩棚の下の氷を削り、満足に広がらないテントで泊まったことはある。下を平らにすることもできず、寝るのもかなり大変。しかもそんな時に限って悪天に捕まり、何泊もすることが多いのだ。

 メンバーと話すネタもすぐに尽き、娯楽もない。雪崩や落石に当たらないことを祈りながら、ただひたすら時間が経つのを待つのである。誰かの足が臭かったりすると、メンバーのストレスは倍増。目上のパートナーといる時などは、相手が臭いよりも自分が臭くて迷惑をかけることがストレスである。

※ 登攀に時間のかかる大きな壁(岩壁・崖)で、クライマーが夜を過ごすために開発された、壁に吊るすタイプの簡易テント。