著者が初めてメスティンを見たのは1998年頃。大学山岳部の先輩が自宅でご飯を作ってくれた時の炊飯道具が、それだった。当時日本では、一般販売のメスティンはトランギア社製に限定されていたアイテムでもあった。 

 そして今日、メスティンは登山者だけでなくキャンパーにも愛される商品に。現在はダイソー、ワークマン、ニトリなどが販売、多くのメーカーが手がけるようになった。

■通常のクッカーとメスティン、どこが違う?

 基本的に料理を作るためにかき混ぜる作業や、調理後の手入れを考えるとかき混ぜ作業や掃除の際の「手首の基本動作」である円の動きが行ないやすい、丸型の方が効率がいいのは間違いない。熱効率も通常は丸型の方がよい。では、なぜ角型のクッカーが生まれたのだろうか。

 メスティンとは日本語に訳すと「兵式飯ごう」の意味。元々は軍隊で使われていた飯ごうで、兵士の装備品であった。兵式飯ごうと聞くと、ソラマメ形を思い浮かべる方が多いと思うが、ソラマメ型はドイツ軍の「兵式飯盒M1893messkite」を模範したといわれている。しかし、メスティンのパイオニアであるトランギア社のスウェーデンの兵式飯ごうは楕円形であったため、独自の発展を遂げたと推測される。これは北欧の極寒地域というのも影響しているかもしれない。

 兵式飯ごうがソラマメ型(楕円形)であるのには、兵士の背嚢(当時のリュックサック)の外側にベルトで固定し安定させやすいこと。そして大量に並べ薪で炊飯する際、ソラマメ型の内側を合わせることで火が均等にあたってうまく炊けるといった理由があった。

 しかし、当時の極寒地域では個別にオイルを使用して炊飯したと考えられるため、ソラマメ型の必要がなかった、と参考資料に記述されている。

メスティンは、アルコールストーブ・焚火と相性がよくなるように作れらた(写真:園田広宣)