■全山縦走のスタートは原木駅、ゴールは沼津駅

日守山から眺める沼津アルプス。この向こうに見えるはずの富士山は春霞に遮られた

 沼津アルプスは、あたたかい黒潮の恩恵を受ける駿河湾が近く、ひと足早い春の訪れを楽しむことができる。新緑に桜が入り混じる様子は本当にきれいで、箱根方面、駿河湾、そして富士山の眺めまで楽しめる縦走路が続く。

 全山縦走に挑戦するなら、伊豆箱根鉄道駿豆線の原木駅(ばらきえき)からスタートするのがおすすめ。駅を出発し狩野川を渡って山に入ると、見どころはすぐにやってくる。日守山(大嵐山)の山頂を彩る桜の楽園だ。地元の方々が散歩に登ってきて交流をする光景が、この山の日常。桜の木の下にベンチやテーブルが設置されているし、展望台からは抜けるような箱根の絶景が最高だ。

 しかし、ほっこりした気分は束の間のことで、この先にはハードなアップダウンが待っていることを心得たい。急な傾斜には固定されたロープ、岩場には鉄梯子もある。気を引き締めて挑もう。

■日本一深い湾と日本一高い山に励まされる縦走路

縦走路の途中の稜線より、駿河湾と伊豆半島を眺める

 駿河湾がすぐそこだから、海の眺めは本当に気持ちがいい。低山ならではの展望といえるだろう。特に鷲津山から香貫山へと続く起伏の激しい縦走路は、時おり姿を見せてくれる富士山とともに太陽が煌めく海に励まされながら歩くことになる。写真が趣味だという人は、足を止めること多々。そういう時間も計算に入れて、ゆとりをもって計画しよう。

沼津アルプスといえば、この手作り道標。これをすべて撮るために歩くマニアもちらほら

 原木駅から沼津駅まで歩く場合、総距離はおよそ15kmとなる。コースタイムは8時間ほど見ておきたい。体力に不安がある場合は、もう1時間ゆとりをもって計画しておくといいだろう。その際、峠から途中下山できるコースとバス停も調べておくと安心だ。

 逆に、もっとも短いコースで沼津アルプスを楽しむとしたら、一番北に位置する香貫山の散策で決まりだ。この山も桜の名所として県下に知られており、とくに香陵台の五重塔越しに望む富士山と桜の共演は見事だ。沼津駅からピストンできるのも嬉しいポイント。

 このコースは公共交通機関でいけるのが最大のメリット。余裕がある方は、翌朝早くから行動できるように、三島駅周辺で前泊したいところだ。三島はうなぎが有名だから、前夜祭と称して精をつけてから挑むなんてどうだろう。週末を利用した1泊2日の山旅として最高ではないか。

 後編は、これまた山頂の桜がシンボリックな低山、棒ノ嶺(棒ノ折山)を取り上げる。埼玉県から東京都へと縦走する尾根道は、新緑の季節こそ抜群の気持ちよさ。バスと電車を利用するコースを案内したい。