■白熱の接戦となったレース!

●初日は “スプリント”

“スプリント”。白熱の接戦! シニア男子決勝トーナメント

 “スプリント”は文字どおり山岳スキー競技のなかでも短いレースだ。スキー場内に特設されたコースにはさまざまなセクションが待ち受けている。登りのコースには、あえてジグザグにルート設定をして(登りの)ターン回数を増やしてあったり、スキーを外して背中のバックパックに素早く装着、そのままスキーブーツで登るセクションもある。登りきった後は、アルペンスキーのように旗門がセットされたコースを滑走する。登りの体力だけでなく熟練したテクニック、スキーの速さも必要となる。

 当日は天候にも恵まれて暖かい一日だった。ゴールエリアから全体を見渡せるくらいのコンパクトな範囲で行われるのも特徴で、この日のために各地でトレーニングに励み、全力で走り滑る選手たちに熱い声援が送られていた。

 各クラス合わせて40人ほどが出場した。シニアクラス男子の優勝は、島徳太郎(長野県)。2位は平林安里、3位は藤川健)。シニアクラス女子の優勝は滝澤空良(北海道)、2位は上田絢加、3位は古田紗恵子。ジュニア(U20)男子は萩原悠己。ユース(U18)男子は宮下環。女子は小林華蓮。(文中、敬称略)

※ プロスキーヤー、ガイドである藤川健は、ライターとして当サイトにも原稿を寄稿している。

●2日目は “インディヴィジュアル”

宇奈月温泉街をいっせいにスタートする選手たち。先頭は優勝した島徳太郎選手

 “インディヴィジュアル”競技は、“スプリント”より長く過酷なコース設定になる。宇奈月温泉街から一斉にスタートした選手たち約50人は、スキーを背負って街中を抜け、雪のある林道入り口でスキーを履いてスキー場内の特設コースへ。さらにスキー場外の上部エリアへ登り、滑り降りてくる。再び特設コース、スキー場外のエリアへ登り……。距離約10kmのコースをトップの選手たちは約1時間20分ほどでゴールしていた。

 前日の晴天から一転、下部は雨、上部は雪。ときおり風が強く吹き付ける悪天候で、選手の安全面を考慮してコースを一部変更しての開催となった。さらに雪の状態としても滑走困難な状態で、滑りでも相当体力を消耗するタフなコンディションだった。

 男子シニアクラスはトップ集団が近接しており、熾烈な争いとなった。とくに前日1位の島徳太郎と3位の藤川健のトップ争いが終始デッドヒートを繰り返し、その模様は観客はもちろん、レースに参加している選手たちにとっても注目の的となり、大いに盛り上がっていた。(実は昨シーズンの「栂池高原スキー場」での第14回大会においてもこの2人は優勝争いを繰り広げ、島が優勝、藤川が2位。)

 シニアクラス男子の優勝は、島徳太郎(長野県)。まだ競技歴は浅いながらも昨年に続き“インディヴィジュアル”連覇。さらに“スプリント”に続いての2冠を見事達成した。「下りの速い藤川選手が迫ってくるので、どれだけ登りで差を広げていけるかを課題にレースをした」。今後の展望として、4年後のオリンピックを見据え「3月にイタリアのワールドカップに参戦予定」とのこと。初の海外レースに向けて熱い思いを語っていた。2位は藤川健、3位は小寺教夫。

 シニアクラス女子の優勝はこちらも昨年同様、滝澤空良(北海道)。「雨が降って変化した雪質に対応する下り(スキー滑走)の技術が追いついていなかった。2周目には調整できたが、オリンピックを目指しているので、しっかりと練習して確実に切符を掴みたい」。2位は上田絢加、3位は堀部倫子。ユース(U18)男子は宮下環、女子は小林華蓮という結果だった。

 ここ数年で若手がぐいぐいと頭角を現してきているが、ベテラン勢も負けておらず、20〜40代と幅広い年齢層の選手が表彰台に上がっている。選手それぞれに得意な部分を活かしたレース運びをするので、そのあたりも注目して観戦すると一層おもしろい。

 実は日本勢と世界の選手たちとのレベル差はかなり開いているのが現状だ。2026年のミラノオリンピックに向けて日本人選手が活躍するためには、より一層の競技の普及と選手たちのトレーニングが必要になるだろう。藤川の「(skimoを盛り上げるためには)どうしてヨーロッパでskimoが盛り上がったのか。その点を踏まえて考えて目標設定していく意識が必要」という言葉が、非常に奥深く印象的だった。