■「戸狩温泉スキー場」日本一の大河、千曲川へ滑り込む地形豊かな山肌で温泉が湧くスキー場
飯山市街地からさらに北へ15㎞ほどいった県境近くの麓に広がる「戸狩温泉スキー場」。ゲレンデ山頂で積雪4mを越える長野県下屈指の豪雪地である。麓には湯量豊富な温泉が沸き、2つの公衆浴場と民宿が軒を連ね、スキーヤーを出迎える。千曲川沿いを走る国道117号からスキー場までは急勾配が無く、マイカーでのアクセスも容易だ。
案内してくれるのはこの人!
庚 敏久(かのえ としひさ)さん
●日本の原風景のなかにある地元LOVEの豪雪パラダイス
リフトの上から後方を見渡すと、飯山盆地を囲むように斑尾高原スキー場、木島平スキー場、野沢温泉スキー場が山肌に見えた。数ある北信州のスキー場の中でももっとも雪深いのが、ここ戸狩温泉。背後にそびえる関田山脈に日本海からの湿った空気がぶつかり、たっぷりの雪が降り注ぐ。
「ゲレンデトップで4mを越えました。ありがたいけど、ちょっと降りすぎ(笑)」
戸狩で生まれ育ち、地元ジュニアチームのコーチをしている庚敏久さんにゲレンデを案内してもらう。
ゲレンデは、大きく2つに分けられる。温泉街からすぐのペガサスゲレンデと山の奥にあるすり鉢状のとん平ゲレンデだ。
普段は非圧雪のパウダーコースとして人気の最大斜度39度のジェットコースが、来週の大会に備えて圧雪されていた。圧雪車が登れないほどの斜度ゆえに、上部に固定したワイヤーを引いて圧雪するらしい。すかさずジェットのグルーミングバーンへ。前方が見えず尻込みするほどの急斜面。きれいに圧雪されたこれほどの急斜面を取材班は知らない。
翌日は、30㎝ほどの新雪に恵まれた。平日なのにゲレンデにはビブを付けたちびっ子が大勢いた。年に2度開催される地元戸狩小学校のスキー授業だという。庚さんの長男の姿もあった。地元に愛され、地元民に支えられる地元密着型のスキー場なのだ。
とん平第1ペアリフトに乗って、非圧雪のチャレンジコースへ。風の影響を受けにくいすり鉢状のとん平ゲレンデには上質な雪が降り積もり、競争率も少ない。続いて、馬の背ペアリフトから馬の背コースを落とす。開放的な非圧雪バーンに思い思いのシュプールを描く。一つひとつのコースは短いが、四方八方あらゆる方角へ向いて繋がっている。複雑な地形が滑り手を刺激する雪山だ。
ある高台を指差しながら庚さんが言う。
「あそこは昔、狼煙台があったところです。段々に堀が築かれているのが見えるでしょう? 上杉謙信の川中島出陣の際の前線基地として、戸狩は戦略的にも重要な場所だったようです」
戦国時代の空気を感じられるスキー場もなかなかあるまい。
■ツリーランからモーグル、ポール練習までバリエーション豊かなメインゲレンデ
駐車場のすぐうえ標高390mからはじまるペガサスゲレンデはバリエーション豊か。上級者が楽しめる非圧雪ツリーラン、本格的なモーグルやポール練習。初級者は林間コース、ちびっこゲレンデへ。汗を流したあとは徒歩1分の公衆浴場「暁の湯」でリカバリー。
■プロも初級者も満足するモーグル
ペガサスビートル4リフト脇のダイナミックコースには、モーグルコースが常設。将来の若きオリンピアンも籠って練習するほどの本格的なコースだ。初心者コースもある。
豪雪地の集落を流れる千曲川がゲレンデのどこからも見える。集落と集落の間の雪面は田んぼである。皇室献上米コシヒカリがとれることからも分かる通り、戸狩温泉は米作りに適した土地だ。千曲川が運んできた肥沃な土と、夏にかけてゆっくりと溶ける山の雪。戸狩の人々にとって雪はなくてはならない天からの贈り物なのだ。