■レンジャーに聞く、ニュージーランドの生態系の変化
ハットに戻ると、DOCのレンジャーが宿泊客を前に土地の歴史や自然について解説していた。彼によると、ニュージーランドはかつてオーストラリア、アフリカ、南アメリカ、インド、南極などが1つにまとまったゴンドワナ大陸の一部だったそうだ。それが約9000万年前に分裂して以降、他の地域と陸続きになることがなかった。
陸生哺乳類はコウモリだけで天敵が少ないため、鳥にとって天国のような場所で、飛べない鳥もずいぶん繁栄した。ところが10世紀頃、ハワイ諸島、サモア諸島、クック諸島などを含むポリネシアから、丸木舟をベースとしたカヌーを操ってマオリ族がやってきた。彼らはニュージーランドを「AOTEORA(アオテオラ:長く白い雲のたなびく地)」と名づけ、サツマイモや野菜を育てるため森林を伐採したり、ネズミや犬を持ち込んだため、飛べない鳥やその卵が捕食されてしまったらしい。
こうしてニュージーランドの生態系は変化していった。しかしマオリ族の営みより、その後やってきたヨーロッパ人が行った森林伐採や、彼らが持ち込んだウサギ、イタチ、オポッサム、鹿などが生態系に及ぼした影響の方が遥かにに大きかった。
現在では移入された外来種による被害を防ぐため、さまざまな取り組みをしているとのこと。もしやと思い、途中で何個も見た木の箱の写真をレンジャーに見せると、野鳥を食べてしまうオコジョを捕獲するためのワナと教えてくれた。