2022年の山初めを「雪山ハイクと初詣」をセットにするなら、という今回のテーマ。前編では、霧氷の美しさで群を抜く赤城山と麓の赤城神社を取り上げた。後編では、八ヶ岳やアルプスなど、名だたる名峰に東西南北を囲まれた諏訪の名山「守屋山」を取り上げたい。山頂に鎮座する守屋神社の奥宮と、さらに山麓に鎮まる諏訪大社上社前宮をお詣りする、新春の山初めにふさわしい登拝の山旅だ。

■八ヶ岳と日本アルプスを四方に望む、絶景の双耳峰

これだけ完璧な八ヶ岳の連なりを間近に眺められる山もそう多くはない

 長野県のほぼ中心に位置する諏訪の地に守屋山はある。東には八ヶ岳の南北の稜線がはっきり視認できる近距離にあって、西には中央アルプスや木曽の御嶽が聳え立つ。南には南アルプスが連なっており、守屋山がその前衛的な位置にあることがわかるだろう。北には霧ヶ峰や美ヶ原、そして北アルプスも近い。

 これほど名の知られた山々に四方を囲まれているのだから、眺めの良さは折り紙付き。登る前から気分が高まるというものだ。

 なだらかな起伏や小山が続く、横に大きい丘陵性の山容で、1,631mの東峰と1,650mの西峰がある。このようなふたつのピークをもつ山のことを「双耳峰」と呼ぶ(他に谷川岳や鹿島槍ヶ岳が有名) 。守屋山は東西どちらからも展望がよいものの、その個性はちょっと異なるのだから楽しい。

岩で覆われた東峰の頂。その向こうに中央アルプスや木曽御嶽を眺めることができる

 東峰には6世紀の有力豪族たる物部守屋を祀る守屋神社奥宮があり、鉄格子に囲まれた状態になっている。これはかつて奥宮の石祠を谷に投げ落とす雨乞いの祭祀があったことと関係があるそうで、それを防ぐための鉄格子なんだとか。

 麓の地域では、守屋山の上空にかかる雲によって雨を予測する観天望気が盛んだったようだし、古い資料には「晴ヶ峰」と記述されている山でもあった。諏訪湖の対岸には「霧ヶ峰」もあるし、天気のこととなんらかの関係性を感じさせる山域である。