■整うこと間違いなし! 源泉掛け流しの銭湯が甲府スタイル

観ているだけでも癒される国母温泉の湯船。淡い光に包まれるレトロな温泉銭湯の世界へと誘われる

 下山後は麓の塩山温泉もあるのだが、甲府まで少々足を延ばして街中温泉銭湯巡りをぜひともおすすめしたい。

「温泉銭湯」とは、昔ながらの銭湯の内観を残しつつ、湯船には源泉がじゃばじゃば注がれているというもの。泉質と内観の世界観は、それぞれの銭湯ごとに違っていて、好みのお湯を探す楽しみがある。

 大半が甲府駅周辺に点在している。駅北側エリアは徒歩でも巡れる距離にあるので、電車の場合は北側中心に巡ってみるといい。ただ、僕がおすすめしたい2軒の温泉銭湯は南側にある。

 1軒目は「草津温泉」。46℃の加水、加温なしの熱めの源泉がかけ流しで広々とした湯船に注がれている。泉質は天然ラドン含有・芒硝・重曹・食塩泉で、よく温まるお湯だ。営業時間は朝の6時から22時までなのも心強い。初めて巡るなら、まずは草津温泉を選ぶと間違いないはずだ。

街に溶け込む温泉銭湯は日常の一部。早朝からオープンしてるので、様々な人の憩いの場になっている

 そして、僕が一番おすすめしたいのが、草津温泉からほど近い「国母温泉」。この温泉銭湯が本当に気持ちよく感じられるのは、夜よりも昼間の時間帯だろう。なぜなら浴室のデザインが植物園のような、柔らかな間接光で照らされていて、人工光は脱衣所にも皆無なのだ。自然光しかない静かな湯船は少し茶褐色の湯で、4つの温度帯があり、好みの湯船に浸かりながらゆらゆらと逆光に浮かび上がる湯気をいつまでも眺めていたくなる極上の世界。さらに、露天風呂の湯温も絶妙な湯加減で、登山アフターの身体を優しく包んでくれる気持ち良いお湯だ。

 お湯から上がり、脱衣所の少しひんやりとした、薄暗い雰囲気で少し目を閉じてみるのもいい。日頃の騒々しい時の流れとはかけ離れた静かな世界が、たったの430円で楽しめてしまうのだから、日常から少し離れたい時にふらっと通ってしまうのは僕だけではないはず。

 これだけ楽しんでも、午後の早めの時間には帰宅開始できてしまう。満足感と余裕があり、なにかと忙しいこの季節にはぴったりな山旅計画だと思う。