日本ではあまり認知度がないスイスワインは「幻のワイン」とも呼ばれる。なぜなら、その生産量のほとんどが国内で消費されてしまうからだ。
高地の清らかな空気の中で栽培されたブドウから作られたワインは上品で清らか、ミネラルが多くメリハリが効いた味わいで美味しい。繊細な風味は寿司や天ぷらなどの日本食との相性も良く、食事をより幅広く楽しむことができる。
■「自国消費」がほとんど、海外輸出量はなんと約1.5%のみ
スイスは九州ほどの国土面積である。栽培されているブドウは約250種類。その比率は世界トップといわれている。26州あるうち一番の生産量が多いのは、マッターホルンが位置するヴァレー州で、全体の約3分の1を占めている。
世界でも希少なスイスワイン。高品質を保つため葡萄の生産量が制限されており、輸出量はわずか約1.5%だけだという。非常に少ない生産量で、その産地でしか飲むことができない貴重な銘柄も多い。スイス国民は1人あたり1年で750mlの標準ボトルワインを約38本飲むという統計が出ており、そのうち約14本がスイスで生産したものだ。
■ヨーロッパで最も高所にあるブドウ畑=フィスパーテルミネン
ヴァレー州の標高1378mのフィスパーテルミネン村は人口約1400人の小さな村。ツェルマットへ結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道の起点でもあるフィスプの駅からポストバスで 30分ほど登ったところだ。標高650mのフィスパ川から村までの標高1150mの山間に棚田のようなブドウ畑が広がる。
栽培の歴史は長く、考古学的遺物からはケルト人がこの地ですでにブドウを育てていたことが分かっている。
■アルペンワインの真珠=ハイダワイン
ワイン醸造所のザンクト・ヨーデルン・ケラーでは赤・白を合わせて年間約40万本のワインを出荷している。ここで作られた白ワインの「ハイダ」は、「ヨーロッパで最も高いところで作られたワイン」として有名だ。「アルペンワインの真珠」とも呼ばれている。
品種はソヴィニヨン・ブランやトラミネールから派生したブドウの木だ。フルーティーな味わいで香りが良く、アルコール度と糖度が高い。白ワインの生産が約60%、そのうち約4割が「ハイダ」となる。