■人の少ないトレイルをのんびりゆるくアップダウン

清々しい朝の空気をまとった竹林を抜ける登山道

 苔寺を過ぎて川沿いに進むと、すぐに苔寺谷の登山口が現れます。ここから京都一周トレイル西山コースの登山道に入っていきます。

 青々とした竹林の中を上がっていくと、すぐに緩やかな尾根道へと続きます。尾根に上るあたりから植生が変わりましたが、あまり紅葉の色づきは見られませんでした。道は広くはありませんが、なだらかで歩きやすいので、軽快に進んでいきます。

尾根道はいつ歩いても気分がいいものです
ふと見上げると、繁る枝葉のパズルのような、迷路のような

 トレイルではファミリーハイカーや年配のご夫婦など、歩く人とぽつぽつと出会う程度。行楽シーズン真っ只中であることも忘れてしまいます。

 コースはいくつかの小ピークをつないで適度なアップダウンを繰り返すので、飽きずに歩けます。もともと迷いにくいルートですが、京都一周トレイルの道標が小刻みに案内してくれるのでさらに安心感が増します。

四つ辻からの眺め。五山の送り火「鳥居形」の火床も見えました

 しばらく歩いて、やがて開けた広場に到着。四つ辻と呼ばれる分岐で、松尾山山頂への周回ルートと嵐山方面への道に分かれます。ベンチもあるので小休止。

 ここからは嵐山・嵯峨野方面から東山方面の山々までがよく見えます。京都の眺望は、朱に輝く大鳥居やひときわ大きな社寺の屋根、建物の間に島のように浮かぶ森など、特徴的な景色が広がるので、スマホの地図などを駆使して“山座同定”ならぬ“社寺同定”をするのも、このトレイルならではの楽しみのひとつです。

■山の中から再び里へ

嵐山の紅葉を“内側”から楽しめます

 今回は時間の都合もあり、松尾山頂は次の機会にお預け。嵐山方面に下ります。ここも尾根伝いの道になり、ところどころに赤や黄に色づいた木々が目立ち始めました。

 やがて紅葉の木々が竹林に変わり、あっという間に松尾山登山口に出ました。阪急嵐山駅の裏手にあたり、人や車の往来が激しい場所です。

この景色を、紅葉の「内」と「外」から眺めるシアワセ

 午前中といえど、紅葉時季の嵐山は既に観光客の人波が。阪急嵐山線の電車が到着する毎に駅から溢れ出てくる人々が渡月橋の方向に向かって狭い歩道を進んでいきます。トレイル歩きで人の少ない道を歩いてきた身には、このギャップにめまいがしそうです。

 桂川にかかる渡月橋も人の波。のろのろと渡りながら川上に目をやると、たくさんの手漕ぎボートが浮かぶ川の向こうには、紅葉をまとった嵐山の山肌が。全国からここを訪れているたくさんの人達と一緒にその景色を眺めながら「ついさっきまであの山並の中にいたんだなあ」と感じずにはいられません。