■栗駒山の全山紅葉「神の絨毯」は、方角で色が異なる!?

須川口の登山道は、火山らしさむき出しの岩肌が印象的。向こうに見えるのは焼石岳

 話を山に戻そう。

 山頂付近に馬の雪形が現れることが山名由来となった栗駒山は、秋田県、岩手県、宮城県にまたがる山容堂々たる活火山だ。岩手では須川岳、宮城では駒ヶ岳など、地域によって呼び方も多彩。

 火山だけに周辺は名湯だらけで、下山後に質のいいお湯で汗を流せるのがうれしい。一関の厳美渓・猊鼻渓と平泉の中尊寺・毛越寺はじめ、伊達家ゆかりの古川や岩出山、そして仙台あたりに寄り道する旅も楽しいこと間違いなしだ。

岩手県側を歩く須川口の登山道。こちら側は目にも鮮やかなる「黄色と赤色」 

 もっともポピュラーなコースは宮城県側の「いわかがみ平」から登る中央・東栗駒コースだけれど、個人的には須川温泉から登るコースが好み。現在は産沼コースで迂回しなければならないけれど、源泉の湧き出る須川温泉を横目に入山し、名残ヶ原の湿原と荒々しい山肌を越えて360度の大展望を誇る山頂に至る、表情豊かな登山道はめちゃめちゃ楽しい。

 とはいえ、活火山だけに、その活動状況によってかかる規制や火山ガスには注意して情報収集しておきたい。それと、紅葉シーズンは交通規制もお馴染みとなる。

宮城県側の「神の絨毯」は、南面だけに太陽との共演も見どころ。光によって見え方も変化する

 ところで、特にぼくの印象に残っているのが、紅葉の色彩が山の東西南北で異なるということ。岩手側は「黄と赤」が強く、宮城側は「緑とオレンジ」に染まる。季節や気温の状況、太陽の光の挿し込み具合、その年の雨量や気温などで変わるだろうとは思うものの、山の四方に光る個性には毎度感動する。

独特な色合いに付いた異名は「神の絨毯」。宮城県側は「緑色と橙色」が印象的

 それだけに、深田久弥が著書『日本百名山』のあとがきで栗駒山を入れるべきであったと述懐していることは、とても興味深い。歩いてみればわかるけれど、うん、いい山だなあとぼくも思う。

 それにしても、だ。この「神の絨毯」は言い得て妙なる最高の称号だと思う。いったいだれが言い始めたのだろうか。