■キレット小屋から八ヶ岳最高峰の赤岳へ

 キレットとは尾根がV字に切れ落ちた場所のことで、漢字では「切戸」と書く。キレット小屋が建っているのは、権現岳と赤岳を結ぶ稜線の深く落ち込んだまさにキレット部分だ。小屋は森に囲まれた静かな立地で、八ヶ岳を縦走する登山者を出迎えてくれる。この先はゆるやかな灌木帯が続くが、その先には岩壁の急登が待っている。V字のキレットを下ったからには、それを登り返さなくてはいけないのだ。

■八ヶ岳縦走のメインスポット「赤岳」

 キレット小屋から赤岳(2899m)の高低差は約450m。両手を使って張りつくように岩壁に登り、鎖場やハシゴをいくつもやり過ごし、ふと顔をあげると岩塊のピークが目に入る。これが赤岳山頂だ。開けた山頂からは八ヶ岳を一望できるほか、立山や後立山などの北アルプスが横に長々と連なる景色や、中央アルプスやその後ろの御嶽山、南アルプスの峰々、新潟や群馬、秩父の名だたる名峰をパノラマで見渡せる。この絶景を目にすれば、長くてきつい登りの疲れなど吹き飛んでしまうだろう。

■岩峰群の横岳を越えて硫黄岳に

赤岳直下に建つ赤岳展望荘。稜線の先に横岳と、硫黄岳の爆裂火口跡が見える

 赤岳から急な下りを進み、稜線に沿って横岳へと進む。横岳(2829m)は南北に連なる岩峰群の総称で、遠くから見るとギザギザとした小さなピークが連なるのがわかる。その小ピークをトラバースしたり、ハシゴや鎖場を昇り降りしたりしながら進んでいく。岩壁の鎖場を横に進む「カニの横ばい」などスリリングな場所が続く横岳だが、さまざまな花が咲くエリアとしても有名で、ツクモグサやウルップソウなど可憐な花が目を楽しませてくれる。