■朝靄に包まれる神秘的な精進湖と子抱富士
まずは精進湖のほぼ真西に位置するパノラマ台へと向かう。
初夏ともなると都心部は気温も湿度もどんどん上がるけれど、このあたりはまだ早朝の気温が低く、とても涼しい。運よく冷たい空気が漂う朝ならば、湖面には水蒸気がふわりと立ちのぼり、陽射しに照らされる湖面が少しずつ幻想的な雰囲気となる。短い時間で刻刻と変化していく自然の移ろいに心が奪われることだろう。いやはや、本当に美しい。
朝の早い釣り人たちのボートが行き交う湖上から富士山の方へと視線を移すと、ほんのりと朝靄に包まれた大室山が、富士山に抱かれるような恰好で浮かび上がっている。これが有名な「子抱富士」。精進湖からでなければ見ることのできないスペシャルな構図に、思わず「わぁ!」と声をあげること間違いなしだ。
■広大な樹海に圧倒されるパノラマ台からの眺め
ところで、精進湖には西湖や本栖湖と共通するちょっとした不思議がある。というのは、それぞれの湖面の標高がほぼ同じで、湖水はなんと地下で連絡し合っているということ。実はこれらの湖はもともと「せの海」という巨大湖だったのだ。
そこに、大室山をはじめ富士山北麓の側火山が大噴火する。流れ出た大量の溶岩は巨大湖を分断し、おびただしい溶岩の上には樹林が再生して青木ヶ原を形成した。いまや母に抱きかかえられた赤子のようにおとなしい大室山に秘められた凄まじいエネルギーが、この一帯に大放出されたわけだ。
精進湖からよく整備された登山道を歩くことおよそ1時間。一気に展望がひらけるパノラマ台からは、その大地創造のスケール感を一望することができる。人工物がほとんど目に入らないプリミティブな光景は、いまからおよそ1200年前、西暦800年代にたびたび起こった大噴火による地球からの贈り物なのである。
早起きは三文の徳というけれど、まさに早朝から動いたおかげでいい景色が眺められ、しかも時間はまだたっぷりとある。午後は富士山の東に移動して、もう1つの絶景パノラマ台がある山中湖を目指す。
その前に、ちょっとどこかで休憩だな。