■お花好きには堪らない荒川三山縦走路

背丈が高いオオサクラソウ。千枚小屋周辺のお花畑で出会える

 初日は椹島に自転車をデポして、千枚小屋まで登りたい。ちなみに2021年は小屋の2階部分に冬期小屋スペースが開放されているので、冬期小屋泊かテント泊かを選択できる。来年以降はバスが運行し始めれば、始発に乗って椹島を9時過ぎに登り出せば、余裕を持って千枚小屋に辿り着ける。

 小屋までは、傾斜の緩い単調な登山道が続く。特に前半は飽きてしまうが、水の湧く清水平でひと息入れ、さらにひと登りすると、梅雨時にこそ訪れたい駒鳥池がある。森の中にぽっかりと苔が広がり、神秘的な水をたたえている。

 ここから小屋までのトラバース道には、南アルプスではあまり見慣れない、背丈の高いオオサクラソウが咲いていた。千枚小屋周辺はミヤマキンポウゲなどのお花畑が広がり、水も豊富に湧いていて、のんびりできるお宿だ。

 2日目は、荒川の花畑を巡る花の縦走路へと歩き出す。目指すのは荒川前岳に広がる南アルプス最大のお花畑だけど、この時期は荒川三山周辺全体が花の山になり、まさに「花の縦走路」と呼ぶにふさわしい。

千枚岳の岩場には、淡い色が愛らしいミヤマムラサキが多く咲く

 小屋から近い千枚岳が入口となる。岩場に広がる斜面には、ミヤマムラサキやハクサンイチゲなど、いろいろな種類の花が点在していて、一つ一つ観察しながら歩くので、中々前に進まない。千枚岳はこの時期と8月の2段階でお花が楽しめる山であり、年に2回訪れてしまう場所である。

 丸山から悪沢岳の岩場は、岩と真っ白なハクサンイチゲのコントラストが美しい。花の縦走路は、この先もまだまだ続く。悪沢岳山頂から中岳のコルまでにも、お花畑が点在する。ハクサンイチゲに混ざり、ミヤマシオガマやオヤマノエンドウ、さらにはチョウノスケソウも咲いていて、お花好きには堪らない。この先のお花畑を知らなかったら、ここを終点にして、のんびりと観察したくなるほどだ。

 

南アルプスの中でも最奥のエリアに建つ荒川小屋。水も豊富に湧く気持ちの良いお宿。名物の荒川カレーが恋しい。来年こそ営業再開を期待したい