「低山中心の山歩きに遭難への備えってどこまで必要?」
真面目に登山をする人ほど悩んでしまうそんな疑問について考えます。

※低山:明確な定義があるわけではないが、一般的に標高1000メートル以下の山。

■ココヘリとは、どんなサービス?

 登山愛好者にとって、絶対に避けたいけれど常につきまとうリスクの最たるものが「遭難」です。地図読みスキルを上げる、トレーニングで体力をつける、自分の歩くルートをしっかり調べる、スマホのGPSを活用する……。遭難を防ぐためにできることはたくさんありますが、それでもリスクがゼロになることはありません。

 万が一、遭難してしまったときに役立つ「ココヘリ」というサービスがあることを知っていますか? ココヘリは、会員制の捜索ヘリサービスです。入会金(税込3,300円)と年会費(税込5,500円/スタンダードプラン)で会員になると、キーホルダーサイズの発信機型会員証が貸与されます。

 万一の遭難の際には、本人や家族・友人などからの要請で提携ヘリが捜索(1事案3フライトまで無料)。発信機からの電波をもとに遭難者の位置を特定したら、警察などの救助組織に位置情報を通報して迅速な救助につなげる仕組みとなっています。

 現在では、その会員数も3万人を突破しているとのこと。

天候、分かりにくい登山道、体調……。遭難に至る要因はさまざま

■低山なら遭難の心配は無用……?

 ココヘリへの加入を真っ先に考える人は、峻険な山岳クライミングや雪山登山をするような登山上級者……。というのは、容易に想像がつきます。でも、「そんなハードな登山はやらないし、近場の低山のほかは年に1〜2回アルプスに行ければいいほうだし……」と、悩んだ挙句なんとなく加入をためらったり、そもそも自分には必要ないと判断している人が大半ではないでしょうか。

 そんな登山者にも知っておいてほしいのは、「遭難は決して険しい山ばかりで起こっているわけではない」という事実。

過去5年間の夏山(7〜8月)での遭難発生状況

 警察庁の統計によると、昨年7〜8月の2ヶ月間で、全国の遭難事故件数は470件、遭難者数は541人。ちなみに一昨年はそれぞれ606件、669人。昨年の遭難の減少は、新型コロナウイルス感染防止対策による登山自粛や富士山などの登山禁止の影響が大きいものと思われます。

 昨年夏、最も遭難件数が多かったのは長野県(47件)ですが、東京・埼玉・神奈川の3都県を合計すると、それを上回ります(53件)。また、「ハイキング」での遭難者数は一昨年が8人だったのに対して昨年は20人となっています。

 遭難の態様別では、「道迷い」遭難が最も多く(163人)、遭難者全体の3割を占めました(過去5年間で最も高い割合)。

 これらのことからも、低山での道迷い遭難は、近年増えてきていると言えそうです。新型コロナウイルスの影響で近場の山を歩く人が増えていることも、その傾向を強めているのかもしれません。

 日本全国の山域(沖縄・屋久島以外の島嶼部を除く)をカバーする捜索ヘリサービスは、低山歩きを含めたすべての登山愛好者の「遭難」への備えとして、本人や家族にとって安心材料のひとつになるでしょう。