■さあ、冒険の夜明けぜよ!

 情報が溢れまくり、エベレストの山頂ですらVRで堪能できてしまう現代において、人々は極度のロマン不足に陥ってる。そんな中、秘境、未知、神秘、清流、探検という、ロマン愛好家にはたまらないワードがてんこ盛りな仁淀ブルーの存在を知ったときのワクワクといったらなかった。

 ちょうどこの頃、軽量コンパクトで浅い川でも下れるパックラフト(空気注入式小型ボート)が登場し、一気に下れる川の幅が広がった時でもあった。いわゆる「前人未漕」の川を探検することができるようになったのだ。

 自宅から10時間以上かけて辿り着いた安居川。まだ夜明け直後で日が差してない状態だったが、早速そのブルーの片鱗が僕に襲いかかってきた。早くも「なんじゃこり…」と優作化しそうになったが、まだここは序の口。グッと堪えて下れる区間の下見を開始した。

夜明け一発目でこれ。一気に目が覚める

 未知なる川を下る際は、まず事前に国土地理院の地図やGoogleマップの衛星写真である程度の目星をつけておくといい。「情報過多でロマンがねえって言っときながら、Googleマップかよ!」という外野の声は僕には届かない。リアルなロマンハンターなら全裸でナイフ一本がベストだが、僕はそこまで求道者でも変態でもない。便利なもんはどんどん活用して旅を楽しむのだ。

 とはいえ、現地ではやはり自分の目と足でいろいろな判断をしていく。特に水量の少ない源流域は、いかに比較的漕げる区間を探し出せるかが鍵だ。このあたりの嗅覚は割と経験で鍛えられる。

 小さな集落があるあたりで生唾ものの川筋が目に入った。鏡のように美しい水面が奥へ奥へと続いている。下見の結果、そこから上流約2kmがギリギリ下れる水量があると判断し(その時々によって川の水量は変わる) 、パックラフトを担いで道なき道からスタート地点の川原へと侵入した。

明鏡止水という言葉がぴったりの美しさ
スタート地点。先が未知すぎてワクワクする

 少年時代、初めて隣町に自転車で冒険に行った時のようなあの感じ。不安な感情を好奇心が押し返し、初めて見る風景や、自分の中から溢れ出る新鮮な感情に夢中になったあの頃のワクワク。それが大人になった今でも……いや、大人になったからこそまた楽しめる。それが未知の川を旅することの醍醐味なのである。