■海に山に残る「無人地帯」

山中では登山道を外れると、すぐに藪で行く手を阻まれ、意外に無人の場所へ行きにくい

 日本は“狭い”といわれる国だが、じつは山あり、海あり、離島ありの、非常に複雑な国土を有している。その面積のわりに、無人地帯の広さはイメージ以上といってよい。

 改めて、日本の地理的条件を確認しよう。国土面積約38万平方kmは世界第61位で、地球規模では広い部類。寒帯、温帯、亜熱帯まで広がる細長い国土は広大な海に接し、排他的経済水域は約405万平方km。なんと世界第6位で、海岸線の長さも世界第6位だ。

 しかも、国土の大半は急峻な山岳地帯。日本の森林率約68%は先進国で第2位となり、その半分は天然林だ。大規模な農業を展開できず、食料自給力が低いのはデメリットだが、“遊び”に使える土地が広大に残ると考えてもいい。

 こんな日本の自然環境は世界的に見てもスゴい! パスポートなしで遊べる“無人地帯”は、探せば探すだけ、日本中に見つかる。

■何をするかで考える「地域」と「自然環境」

ジャングルは、危険生物や気候の問題はあるもののアドベンチャー感覚は随一

 日本各地に点在する無人地帯へ遊びに行く際に、重要な要素は2つある。

 一つは“地域の特性”だ。東西南北に国土が広がる日本は、地域によって人が暮らす場所や人数が大きく異なり、フィールドの個性も違ってくる。

 例えば、同じように海岸線を歩く場合でも、北海道で注意すべきはなんと言ってもヒグマだが、沖縄では熱中症である。どこまでも深い山奥に入りたければ本州中央部で候補地を探したいが、川下りなら四国を狙う方が良い。

川近くに道路があることは多いが、人工物が一切ない河原はいくらでも見つかる

 しかし、遠くまで遊びに行くには多大な交通費がかかってしまう。これはバカにできない大問題だ。夏休みなどは思い切って遠征したいところだが、週末程度なら自分が暮らしている地域の近くから、遊びやすいポイントを探すほうが現実的かもしれない。

 地域の特性以外で考えるべきは、地形を中心とした“自然環境”だ。「山にするか、海にするか、川にするか」、「川ならば、源流部なのか、上流部なのか」という話である。“自然環境”は、“地域の特性”以上に遊び方のスタイルを決定的に変える要素だ。

 歩いて行ける場所と、フネを使わねば行けない場所では、必要な装備がまったく異なる。持っていないものは新しく用意しなければならない。カヤックや沢登りのように、それなりのスキルがなければ安全に行動できない場合は、一緒に行くメンバーも考えなければならず、誰もが参加できる計画になるとは限らない。