■「アメリカンBBQの神様」スティーブン・ライクレンとの出会い
過去にアウトドアメーカーで働いていた経験から、私は道具選びには人一倍こだわりがある。
雑誌に関わるようになり、次第に料理ページを担当する機会が増えてきてからも、焚き火台やバーナー類はどこのものがいいか、ダッチオーブンや鍋は何がどのように違うのか、などといつも考えていた。仕事柄、いろいろなモデルを使う機会に恵まれたので、さんざん使い倒し、素材の特性を調べ、どの道具なら効率よくアウトドアでも調理が可能かを考えてセレクトしてきた。
私が道具バカになったのは、アウトドア料理を生業にし始めて間もない2003年に、知り合いから声をかけてもらった1つの仕事がきっかけだった。「アメリカンBBQの神様」と呼ばれるスティーブン・ライクレンのレシピ本の日本語版を発行するための料理を再現する、という大役を担うことになったのだ。
本のタイトルは『バーベキューの王様が教える世界NO.1レシピ』(アーティストハウスパブリッシャーズ刊/2004年)と名付けられた。
当時お手伝いしていた鎌倉のレストラン、「湘南倶楽部」さんが撮影のための場所を提供してくれた。オーナーやアルバイトのスタッフにも手伝ってもらい、わずか4日間で約50品を何とか撮り終えることができた。今思い出しても、感謝しかない。