■2日目、総合力が試される花形競技 インディビジュアル!

トランジットエリア。トップの島徳太郎、追う加藤淳一。若手とベテランの熱い闘いが各所で繰り広げられていた
インディビジュアルのコース(短縮版)

 翌日は個人戦のメイン競技のインディビジュアルが開催された。大半はスキー場管理区域外の山岳エリアが舞台で、登り(シール登高と担ぎ)と滑りを繰り返しながらの総合力が試される花形競技。栂池高原スキー場での全日本選手権大会のメインレースだ。スキー場上部より鵯峰の鞍部をまたぎ親沢源頭まで滑り込み戻ってくる。さらに自然園側を1周。再び鵯峰を越えて裏側を滑りスキー場に戻るというコース設定となっている。

 残念ながら今回は悪天候が予想されたために、安全面からコースはかなり短縮されてしまった。最終的な出走は53人となった。

トップの島徳太郎、それを加藤淳一が追う

 9時30分にスタートしたレースは、序盤からすでに雨が降り出していた。昨日2位だった島、それを昨日優勝した加藤が追う。さらに若手とベテランがバランスよく並ぶ、概ねその展開で進んでいった。

 最高地点である鵯峰の鞍部は、レース中何度か通過するジャンクションポイントとなる。トップ選手たちが次々とやってきては、素早くシールを外し滑走へと移行していく。滑り出だしはガスで視界不良の急斜面、雪面も荒れた状態でかなり難度が高い状況だった。

圧倒的なスキー技術を見せつけた藤川健

 そんな中、我々スタッフ一同を感嘆させたのが、凄まじい勢いで降りていった藤川健だった。細かく刻んだり、転倒したりする選手が続出する状況で、直線的に滑り降りてキレのあるハイスピードターンで消えていった藤川。数年前まで、この大会で8連覇を果たしていた彼は、世界選手権やヨーロッパの大きな大会も経験しているベテランだ。札幌市の「さっぽろばんけいスキー場」では自身が主催するレースも行なっている。

 2周目で登りの最後のセクションを終え、あとは滑りだけとなったのだが、その時点で5位。トップからはかなりの時間差が空いていた。このままの順位で終了するかと誰もが思っていたのだが、まさかの3人抜き、2位まで浮上するという快進撃で選手やギャラリー、スタッフを大いに湧かせた。持久力が重要なskimoでは、つい登りの走力に重点を置きがちだが、スキー競技である以上、滑走能力もまた重要であるということを再認識させられた。けれど全力で逃げ切り優勝を飾った島も見事。トップの座を最後まで譲らずにシニアの部、初参戦初優勝という偉業を成し遂げた。

トランジットエリアでシールを外す選手たち

 女子は昨日優勝、初出場ながらトレランの世界ではハセツネ3連覇中の高村貴子。前回2位の滝沢空良も以前は、XCスキーの選手として国体で優勝経験を持つ逸材。そこに今伸び盛りのトレイルランナー上田絢加を加えた3人の三つ巴の勝負となった。ここでも高村の自力が勝り、初出場とは思えない横綱相撲で他の二人を圧倒し初優勝を飾った。これから楽しみな選手たちである。

ゴールした直後の選手たち。お互いの健闘を称えあう

 今回の大会は若手選手の台頭が目立ち、ベテラン勢とのしのぎを削る様が見ものだった。ユースオリンピックの効果なのか、盛り上がりの兆しなのかもしれない。今後の展開に注目していきたい。最後に、悪天候の山岳エリアで全力をふり絞って死闘を繰り広げた選手たち。レース後の表情は空模様に反して、皆晴れやかだったのが印象的だった。

表彰式。インディビジュアル国際規格シニア女子。写真提供:JMSCA
表彰式。インディビジュアル国際規格シニア男子。写真提供:JMSCA

 

インディビジュアル ショート&ビギナー順位
インディビジュアル国際規格 ジュニア男子&ユース男子順位
インディビジュアル国際規格 シニア女子順位
インディビジュアル国際規格 シニア男子順位

 

取材協力:JMSCA(日本山岳・スポーツクライミング協会)
https://www.jma-sangaku.or.jp/sangaku/?ca=92
https://www.facebook.com/groups/1517748641802029/