知らないことばかりの「デカい山」の世界。とてつもなく大きく、神秘に満ちたその世界をちょっとナナメな視点からクローズアップしていきたい

■世界最高峰より厳しい山、その条件とは?

 標高が高い山は、登山者を苦しめる。高ければ高いほど、登頂しづらいものである。しかし、必ずしも標高の高さは登頂のしづらさとは正比例しない。ルートや季節によっても大きく変わってくるが、エベレスト(8,848m)は必ずしも世界一制覇しづらい山という訳ではないのだ。では、世界最高峰より難しい山、厳しい山にはどんなものがあるのか?

 地球上には、8,000m峰が14座ある。それらはすべてヒマラヤ山脈、およびカラコルム山脈にある。そのなかで、人類が初めて登頂に成功したのは、ネパールの「アンナプルナ(8,091m)」である。その偉業を成し遂げたのはフランスのモーリス・エルゾーグとルイ・ラシュナルの2名で1950年のことだ。ところが、この山こそ、もっとも登頂が難しい山だといわれている。その北側は雪崩が頻繁に発生し、南壁は大岩壁となっているからだ。そのため、登頂者数200名程度に対し、死亡者数は60を超える。2014年には大きな雪崩事故があり、43名の死亡が確認されている。その死亡率は38%を超えるとも……。

アンナプルナとは、サンスクリット語で「豊穣の女神」の意味。4つの峰があり、第1峰が世界で10番目に高い8,000m峰だ

 8,000m峰のなかで、他に難しい山が中国とパキスタンにまたがる「K2(8,611m)」と、パキスタンの「ナンガ・パルパット(8,126m)」だ。「非常の山」の異名を持つK2は、冬季の登頂が達成されていない唯一の8,000m峰。人が住む場所から離れておりアプローチそのものが困難であること、厳しい気候条件、急峻であるため雪崩、滑落の危険性が高いことなどが、その原因とされる。ナンガ・パルバットは初登頂がなされるまで多くの犠牲者を出したことから、「人喰い山」なる恐ろしい異名も。なかなか冬季登頂が成功せず、ようやく実現したのは2016年のことだ。この2つの高峰は20%以上の死亡率である。つまり、5人に1人が命を失うという厳しさなのだ。

■8,000mでなくとも超厳しい山は世界各地にある

 8,000m峰以外では、カラコルム山脈に位置する「バインター・ブラック(7,285m)」が厳しい山として知られる。ここは鋭く険しい岩峰だ。「オーガ」とも呼ばれるが、これは「鬼」という意味。鬼のように厳しい山なのだ。初登頂は1977年にイギリスの隊が成し遂げたが、それに続く登山者が現れるまでは、実に24年を要した。
 スイスの「アイガー(3,970m)」は、前述の山々と比べると標高はグッと低いが、その北壁は、「死の壁」として脅威の対象であり続けている。雪や氷で覆われる岩壁の高さは1,800m。その距離をピッケルを突き刺しての登攀が必須であり、危険度は極めて高い。チリの「セロトーレ(3,128m)」は、ナイフのような峰が4つある。その頂上を覆う氷が登頂に際しては最後の大敵となる。

 登山は常に危険を伴うものだ。だが、こうした山々の存在こそが、登山家たちの冒険心を掻き立てて、登山文化の発展に貢献したのもまた事実なのである。

アイガーの北壁には、登山家たちを引きつける魅力がある

●覚えておきたい「登頂が難しい山」

▶K2:8,611m/パキスタン ・中国
▶ナンガ・パルバット:8,125m/パキスタン
▶アンナプルナ:8,091m/ネパール
▶バインター・ブラック:7,285m/パキスタン
▶アイガー:3,970m/スイス
▶セロトーレ:3,128m/チリ