その昔、「狭い日本 そんなに急いで どこへ行く?」という交通安全スローガンが流行った。

「うまいことを言う。たしかに日本は狭いなァ」と当時は思ったけど、今はむしろ、狭いわりには全国津々浦々に郷土料理があることに感心している。そして、そのうちのいくつかが缶詰で再現されているのも興味深い。

 そのひとつが静岡市清水区の名物「もつカレー」だ。一般的なモツ煮込みと違い、モツをカレーで煮込んであるから、ごはんにかけて食べるのかと思ったらそうではなく(かけてもいいけど)、本来は酒のつまみなのである。

■カレーとどて煮の組み合わせ

「金の字」のもつカレーはこんな様子(筆者が家で再現)

 もつカレーの発祥は、JR清水駅近くにある焼き鳥店「金の字 本店」と言われている。

 創業者の杉本金重さんが、戦時中に満州で食べたカレーと、名古屋の「どて煮」(豚モツを八丁味噌などで煮込んだ料理)を組み合わせる形で発案した。焼き鳥のように串刺しになった豚モツは臭みがなく、コクのあるカレーソースが絡んでいて、ビールやチューハイによく合う。創業した1950年から販売しているというから、歴史が古いのだ。

 金の字では「地元が盛り上がるのならマネされてもいい」と、もつカレーの商標を取らなかった。おかげで他の店舗でも提供するようになり、徐々に人気が拡大して、とうとう清水を代表する郷土料理のひとつにまでなった。

■今年9月にリニューアル発売

ホテイフーズ「もつカレー」の内観

 さて、そのもつカレーが地元・静岡のメーカーにより缶詰化されている。

 ひとつは、はごろもフーズ「清水もつカレー」で、もうひとつはホテイフーズコーポレーション「もつカレー」だ。今回取り上げるのはホテイフーズのほうである。

 じつは、ホテイフーズのもつカレー缶が発売されたのは2011年のこと。看板商品のやきとり缶の陰に隠れつつ、15年をかけてファンを増やしていったようで、今年9月にリニューアル発売された。

 旧バージョンは、モツらしいクニャクニャした食感があったけど、新バージョンはモツを一度、油で揚げる工程が加わっている。おかげでモツから余分な脂分が落ちて香ばしくなり、食感も弾力は残しつつ、歯切れがよくなった。