先日、某缶詰メーカーから質問が届いた。「最近サバ缶の需要が急伸しているのですが、なぜかわかりますか?」

 中東情勢や物価高への不安から、保存できる食品として缶詰需要が伸びている可能性はある。ただ、サバ缶についてはわかりやすい別の理由がある。フジテレビで放送中のドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』が話題になっているからだ。

 ドラマの内容をざっくりいうと、福井県の水産高校の教諭と生徒らが、実習で製造しているサバ缶を宇宙食に採用してもらおうと奮闘する話なのだが、そのサバ缶がなんと市販されている。どんな中身なのか、気になりませんか?

■JAXA認定の宇宙日本食を再現

パッケージには「若狭宇宙鯖缶」が誕生した経緯が記されている

 商品名は「若狭宇宙鯖缶」という。製造は缶詰メーカー「福井缶詰」が担っているが、その元になったのが、ドラマにも登場する福井県立若狭高校海洋科学科が開発した「サバ醤油味付け缶詰」だ。

 2018年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が「宇宙日本食」として認証したもので、それを市販品として再現したのが、若狭宇宙鯖缶というわけ。パッケージの説明文には「宇宙食鯖缶を、地上の方にも手に届きやすいものにしました」なんて書かれているから、食べる前から宇宙へのロマンが膨らんでしまう。

■無重力に対応した工夫とは?

若狭宇宙鯖缶の外観と内観。味付けは砂糖しょう油味

 ところで、食品を宇宙食として認めてもらうには複数の高いハードルを越えないといけない。そのひとつに、ISS(国際宇宙ステーション)のような無重力環境で食べるのに適しているかどうか、ということがある。この若狭宇宙鯖缶を食べると、無重力に対応した工夫が2つ体感できる。

 まず1点は、味付けを濃くしていること。宇宙飛行士の個人差もあるが、人間は無重力になると味を薄く感じるそうだ。このサバ缶は砂糖しょう油の味付けだが、一般的なものよりも砂糖の量を増やし、味を濃く感じるようにしてある。

 もう1点は、缶汁の粘度、つまり“とろみ”具合を強めていることだ。

■宇宙飛行士の気分が味わえる?

一般的なサバ缶よりとろみが付いている

 無重力環境では、液体は床に落ちることなく、あちこちに浮遊する。しかしISS内の壁面には精密機械が並んでいるので、そこに水分が付着するとシステムに不具合が生じる原因になる。なので、このサバ缶の缶汁は、一般的なサバ缶よりもかなり粘度を高めてある。

 とはいえ、この若狭宇宙鯖缶の缶汁は、本当に宇宙へ行ったサバ缶(高校生が開発したサバ醤油味付け缶詰)よりも若干粘度が低い。というのも、製造時に缶汁を缶に注入する際、粘度が高すぎるとチューブが詰まってしまうからだ(高校生は手作業で注入した)。それでも一般的なサバ缶より粘度が高く、まるでみたらし団子のタレのよう。この食感ひとつ取っても「ISSではこんなサバ缶を食べてるんだなァ」と、宇宙飛行士気分が味わえて楽しい。